2009年7月30日木曜日

東京事務所始動


先日告知しましたように8月1日より
スタジオクランツォ東京事務所がオープンします。

私もスタッフのK君と7月31日に東京へ行き、事務所設営の準備をします。
当面は東京と大阪を行ったり来たりすることになります。

8月5日(水曜日)まで東京にいますが、6日からは
大阪のスタジオで、外国人スタッフのグラフィックデザイナーと
東京用の新しいプレゼンツールの打合せをすることになっています。

最近書いたブログ「蝉」の中でプロヴァンスの蝉は縁起がいいという話をしましたが
本当にその通りなんだかんだと忙しくなりそうな気配がします。

新しく行動を起こすと何か周りが変わっていきます。
スタッフの気持ちにも変化が感じられ、責任感が顔に出て引き締まってきました。
それぞれが自分の役割を自覚し熟考して行動しているので嬉しく思います。

8月1日は私のバースディです。
新しい気持ちでスタートを切りたいということもあり、
その日を東京事務所のオープン日にしました。

静かに闘志を燃やして東京へ乗り込みます。

2009年7月27日月曜日

牛窓 (壱)


岡山県で土地探しから相談を受けているKさんと、昨日牛窓(瀬戸内市)へ
候補の土地を見に出かけた。

牛窓はある時期(今もそうかも知れないけど)、日本のエーゲ海という
キャッチフレーズで若い女性達に人気があった土地だ。
当時数多くあったペンションやホテルも、最近はずいぶん減少したのだと思うが
浮ついた観光客目当てのみやげ物やなども少なくなったようで
Kさんも僕もすごく落ち着いた町だなと感じました。
日曜日ではあったけど、梅雨の影響で観光客が少なかったせいかも知れない。

さて候補の土地は町の高台にあるオリーブ園のすぐ下にあり、数件の別荘と
芸術家のアトリエがある緩やかな坂の途中にあった。
まだ草刈が済んでなかったので敷地内には入れなかったが
接道する土地の境界辺りに大きな桜の木があり、もしこの土地でプランを計画するとなると、
この桜はすごい力を持つことになるなあと考えながら辺りを見回すと、
敷地北側には緩やかな斜面にオリーブの木が丘の上まで続いている。

西には眼下に牛窓のヨットハーバーや瀬戸内の島なみが点々とする。
東と南には少し離れて木立が広がるが2階にリビングやバスルームを配置すれば
かなりの眺望を得られるんじゃないかな、港の防波堤では毎年8月1日に花火大会があるらしいから
ビールを飲みながらの見物もいいなあなどと、頭の中ではイメージがどんどん膨らみ思わず
「どうです!この土地で手を打ちませんか?」とKさんに「プシュッ」と開けた冷えた缶ビールを
手渡す僕が頭を過ぎった。

Kさんも結構気に入られたようで草刈を済ませたあと、
もう一度ご両親とこの土地を見に来ていただくことになった。

気に入られた理由は他にもあるのでその話題は牛窓(弐)でお話しすることにしましょう。                             


敷地へ続く途中のオリーブ畑。これはまさにイタリア トスカーナ地方や地中海沿いの風景やないの!

左の写真は敷地近くから見た前島。ガスっててわかりにくいけど島の後ろには 
小豆島がドーンと鎮座してます。右は西側に広がるヨットハーバー。素晴らしい景観です。
  
一応電柱番号なんか控えたりして仕事シテマス。
  
左が敷地です。これがすごく気になる桜の木です。春にはどんな感じになるんだろう?


近くにある最近売り出してる別荘地。素晴らしいパノラマが売りです。うっすらと小豆島が見えます。
天気がいいと四国まで見えるんでしょうね。すぐ脇には古墳が整備されてました。
この辺り古墳だらけです。古くから人が住んでた証だし、遺跡が残っているということは
天変地異が少ない住みやすい場所だったのでしょう。



2009年7月22日水曜日

東京事務所を開設します


8月1日 念願のスタジオクランツォ東京事務所を開設いたします。

場所は港区虎ノ門、14階のオフィスの窓からは左手に東京タワー
右手奥に六本木ヒルズの森タワーが見えます。
とても静かで環境抜群の場所です。
しかも地下鉄日比谷線「神谷町」駅に直結していますので
東京駅から雨に濡れないでオフィスまで来ることができます。
こんなにすばらしい事務所ですので、負けないよう本当に気合を入れて
頑張らなければなりません。



 

1階にはこんな小さな公園もあります。
イメージを膨らませたり、アイデア考えたりするには最適の
場所だと思います。
近くにはTV東京、ホテルオークラ、オランダ大使館などもあり
国際色豊かな賑わいのある街です。
お近くへお越しの際は是非お立ち寄り下さい。

東京事務所

〒105-0001
東京都港区虎ノ門4-3-20
 神谷町MTビル14階
TEL 03-5404-3559

営業開始日は8月3日(月曜日)からとなりますので
宜しくお願いいたします。



2009年7月19日日曜日

カプリ島


 大阪は蒸し蒸しする日が続くので少しリゾート気分になる話題を。

 イタリア南部、カプリ島というとこの「青の洞窟」の話になってしまうが
 しかし本当に美しい洞窟であることは紛れもない事実だ。
 カメラでこの洞窟をビシッとピントを合わせて撮るのは至難の技だけど、
  とにかくシャッターを押し捲って、まあ見れるかなという写真が数枚とれれば
 いい方かも知れない。
 あとはボートの船頭にチップをはずんで、2~3回
 回ってもらうしかありません。

 でも言葉や写真では表現できない美しさと神秘性が
 この洞窟にはあります。写真右上の小さな白い部分が
 洞窟の入口です。中はけっこう広い空間になってます。
 

 夏のハイシーズンになると、世界中から観光客が集まり、
 カプリ行きの切符売り場があるナポリの港からもう大騒ぎになってます。

 下の写真はアナカプリの遊歩道から見えるビーチや海岸線。
 そして路線バスでカプリ港へ降りてくる途中に見える港の発着場。
      
 
 下の料理ははアナカプリ(標高275m)にある「ジョルジオ」というリストランテ。
 さすがに島だけあって 魚介類は倒れるくらい美味しい。
 特にアンチョビのマリネは酸味が利いてて、 きりりと冷やした白ワインには
 最高の組み合わせです。

  
 アンチョビのマリネ(シンプルな味です)     スカンピのピリ辛炒め 
  
 海の幸のリゾット。何杯でもお変わりできそうです。ちなみにこのお店、
 繁華街からちょっとはずれたところにひっそりとあるので
 日本人の方はあまり来ないそうです。

   
 カプリのこの港から写真に写ってるボートで洞窟の近くまで行き、そこでもうひとまわり
 小さいボートに移り、洞窟へ入る順番を待ちます。右の写真はアラブの大金持ちの
 プライベートクルーザーらしいです。近くで見ると半端じゃないくらいデカイです。
 クルーと美女もたくさん乗ってらっしゃいました。

 下左の写真の手漕ぎボートで洞窟へ入ります。波が一瞬低くなったときにサッと入ります。
 入口は高さ1メートルあるかないかで、波が高いと天気がよくても中止になるらしい。
 風の強い日は特に難しいらしく、ここまで来て入れない観光客もたくさんいるそうです。
 夏の間の午前中が洞窟は一番美しいそうです。僕らはボートに完全に寝そべってます。
 右側の桟橋にはアナカプリから山を下ってきた人たちがボートに乗る順番待ちをしてます。
 この船頭さんたち4ヶ月ほどで1年分の収入を稼ぐそうで、結構みなお金持ちらしいです。
 洞窟内で「オーソレミオ」とか船頭が歌ってくれますが、たいして上手くない人が多いような
 気もするし、写真撮るのに夢中でほとんど聞いてません。チップは要求されますが。
 

 ほんの少しでもいいから、この海の水をすくってガラス瓶につめ日本へ
 持ち帰りたい気持ちになります。

2009年7月18日土曜日

紫野和久傳 室町店

祇園祭が始まるこの季節になると、京都の「和久傳」におもたせを
買い求めに行くのが毎年僕の恒例行事になっている。

蒸し暑い京都の夏、祇園囃子が聞こえてくる中、阪急烏丸駅から
堺町通りを10分程上ルと弁柄色の大暖簾が見えてくる。
ここが「室町和久傳」。本店は紫野(大徳寺)にあるが、さすがにそこまで出向くのは
しんどいのでいつもこの店を利用している。

        
今日は事務所スタッフのおやつ用に「西湖」を買った。この和菓子は蓮根から採取した
でんぷんと和三盆を材料にしたお菓子で、夏少し冷やして食べるととても美味しい。
洋菓子にはない優しい味がする。
京都は祇園祭の宵山で疫病の厄除けとして配られる粽(ちまき)が有名だが、
笹に包んだこの菓子も無病息災を願う気持ちが込められているという。

    
 タイのセラドン焼きの皿に載せた西湖。     中身はこんな具合で、つるっと喉を通り過ぎる。
                             そしてほのかに和三盆の余韻が口の中に広がる。

 
堺町通りの由来は戦国時代に京の町が衰退していた頃、ここら辺りが京の町と田畑の
境界であったこととされている。
しかし現在は観光客でごった返す「イノダ珈琲」や「キンシ正宗」の看板が目を引く
イタリア料理屋、京都ではよく見かける町家をリノベーションした建物などが
あちらこちらに存在し、あまり静かな通りではなさそうだ。
  

   
 錦市場とも交差し、そのすぐ傍には「錦湯」という銭湯もあります。

 
 和久傳近くの足袋屋さんとその向かいにある蕎麦屋の勝手口に掛けられた
 縄のれん。この暖簾の醸し出す雰囲気が個人的には好きです。

 ゆっくり歩くと路地には料理屋やイタリアンレストラン、ビストロなど
 数え切れないくらいありますが、僕はいつも「和久傳」を目指して
 まっしぐらです。
 何故って?結構烏丸駅から歩くのですが、お店に出掛ける時間が
 どうしてもお昼前後になってしまいその時間、日影があまりないんですよ、
 この通り。汗だくになるんです。だから早くお店に着きたい一心なんです。
 帰りは帰りで荷物が重たいもので早く帰りたいし。。

2009年7月14日火曜日

 
事務所の前庭には1本のナナミノ木があります。
いつもはスズメたちが羽を休める場所になったり、
キジ鳩が巣を作ろうと、様子をうかがいに来る木です。
ここ数日、数匹のクマゼミが地中から羽化し、
木の枝にじっとして羽を休めてます。
私のテーブルの前にその木があるので、
蝉がいることは確認できるのですが、
雌と雄が混在しているから鳴いてもよさそうなのに
まったく鳴きません。
蝉がいることに気が付いてから数日経ちますが一度も鳴きません。
そういえば自宅のマンションの庭にも蝉はたくさんいるみたいですが
あまり鳴き声は聞こえません。
毎年うるさくて静かにしてくれ!と叫びたくなる季節なのですが
なんだか静かなんですよね。
梅雨明けしないと鳴かないとか、大阪の蝉は組合かなんかあって
一斉に鳴く日を決めているのでしょうか?
鳴かない蝉をガラスの向こうに見ながら
仕事をするのも不思議な気がします。


フランスのプロヴァンス地方では蝉は「縁起のよい生き物」として
布地や陶器、はてはブリキのおもちゃまで作られています。
鳴き方もクマゼミのような騒々しいものではなく
「チッ、チッ、チィ」とかわいらしく鳴きます。
この蝉たちも事務所に仕事を運んできてくれると嬉しいのだけど。。

2009年7月11日土曜日

白雪姫とシンデレラ

事務所近くに建築中のホテル棟とオフィス棟を持つ複合ビルがある。
僕のアトリエでは専属図書室と呼んでいる「ジュンク堂」の傍にあり、
よく行き来する場所でもある。
場所柄、24時間体制で工事を進めているようで
急ピッチで建物が成長している。そこには4基のタワークレーンが稼動している。
で、そのクレーンにはかわいらしい名前がつけてある。

        「白雪姫」                   「シンデレラ」

ホテル棟の一番西側に設置されているのが「白雪姫」その隣が「シンデレラ」。
なんとなくその流れでいけば次は「かぐや姫」か「おやゆび姫」、「ハイジ」なんて
名前かなと思っていたのだが、今日ちゃんと調べてみたら、残念ながら残りの2基は
「EAST」と「WEST」だった。
     
        「EAST」                  「WEST」

ホテル棟とオフィス棟で区別しているらしい。
事務所スタッフで大手ゼネコン出身のK君にその話をしたら
タワークレーンがいくつもある現場では、資材の搬入や工事工区の間違いを無くす為
職人さんたちにわかりやすい名前をつけたりすることがあるとのこと。
なるほど、僕らの事務所では10階くらいのビルまでが多いから、タワークレーン1基
あれば事足りてしまうものなあ。
でもせっかくだったら、遊び心のある名前をつけてもらいたかったなあ。

工事場所が北新地ということもあり、手際よい作業が必要なのか
けっこう狭いピッチでクレーンが立ち並んでいる。

2009年7月6日月曜日

法隆寺宝物館とクレマトリウム


東京へ出張した折、時間があれば必ず立ち寄るのが
上野公園の東京国立博物館の敷地内にある「法隆寺宝物館」だ。
設計は谷口吉生さん、平成11年度の建築学会賞受賞作品でもある。

周辺の建物と比較すると、とてもモダンで現代的ではあるが、
建物の姿を映す反射池の中道を進み建物内部に入り、
あらためて池を見返すと、深いキャノピーとガラス張りのファサードを構成する
垂直方向の方立てが、日本の伝統的な障子の現代的解釈であるように思われる。
そしてガラス越しに、池を挟んだ向こう側に黒門とそれを包む緑がたまらなく美しく見える。
その静寂さはステンレスとガラス、ライムストーンと鉄筋コンクリートに囲まれた
現代建築の中にいることを忘れさせてくれる。
そして豊かな空間が内外部に広がる。とても好きな空間の一つです。


アプローチは黒門横から池に向かい建物を正面に見ながら右に折れ、今度は
左に折れて池を渡りキャノピーに到達する。この間合いが好きです。

エントランスホール内部、天井が高く空間に静寂が宿る。

キャノピーと、エントランス内部から黒門方向を見る。静かに連続する
波紋が静寂さの中で光と戯れる。
エントランスの開いた明るい空間に対し展示室は閉じた静かな空間になっている。
中2階の資料室。法隆寺献納宝物デジタル・アーカイブと関連図書が閲覧できる。
この日は外国人向けのレクチャーが行われていた。壁から突き出たライトが面白い。


もう一つはベルリン郊外にあるクレマトリウム。
クレマトリウムとは「火葬場」のことですが、この建物ドイツ首相府などを
設計しているアクセル シュルテス1998年の作品。

とても火葬場とは思えないほど、荘厳かつ崇高な静寂に包まれた空間は
訪れたものをすべての人を神聖な気持ちにさせるオーラに包まれている。

突然の雨の中、3時間ほど歩いてたどり着いた林の中のこの建物は、
靄(もや)に包まれ、そこが斎場であることをまったく忘れさせる建物だった。
抽象的な解釈による森の巨木が樹立する様をコンクリートの柱で表現し、
その頂部からは光がこぼれ落ち、コンクリートの壁面を照らしていく。
 
シンメトリーな建物と植栽。屋根に開けられたスリットからは光が差し込み
その開口部は建物を貫通する。内部には3つのチャペルが用意されている。
      
抽象的な森を表現した斎場部分。コンクリートの柱頂部から光が落ちる。
静寂さの中に荘厳さが満ち溢れている。コンクリートの壁面は外部から貫通した
スリットにより光の帯となる。
      
ちなみにこの建物、シャーリー・セロン主演のSF映画「イーオン・フラックス」
の舞台にもなってます。バウハウス博物館なんかも出てきますので、興味の
ある方はDVDでどうぞ!


法隆寺宝物館は水(前池)に建物を映すという、日本の伝統的な配置計画により静寂さと
空間の豊かさを獲得し、クレマトリウムはシンメトリーな建物と、それをことさら強調するように
均等に配置された樹木とその外側を包む木立により、西洋的な静寂さと緊張感を得ている。

私にはこの2つの建物がまったく違う用途でありながら、類似した精神性や静寂さを獲得して
いるような気がしてならない。
「宝物館と斎場」とうい異なる意味の建物ではあるが、その内部空間に感じるものは
人が心の奥底に持つ歴史性や畏敬、尊厳という部分において同一ではないかと思う。
それぞれの建物の内外部空間のそこここに、設計者の精神性を感じ取ることができる。
二つの建物は静かに佇んではいるが、心を揺さぶる名建築の1つだと思う。