2010年3月27日土曜日

久しぶりの訪問


7年前神戸の山の手で設計した住宅の施主
Mさんから久しぶりにご連絡をいただいた。

トレーニングルームとして使用している部屋の
防音効果がアップするように考えて欲しいという内容だった。

この住宅の設計はとても思い出深いもので、10年ほど前Mさんと知り合うことになって
僕の建築世界は数十倍に広がったように思う。
建築にとても理解がある方で、設計中もずいぶん助けていただいた。
年齢的にも同い年ということもあり、こころやすく付き合っていただいたように思う。

神戸の山の手はほとんどの場所で遺跡が出る。
案の定この場所でも弥生時代の遺跡が発掘され、3ヶ月かけて発掘調査が行われた。

準備工事を開始していたのだが、急遽ストップし調査の結果を待つことになった。
さんは何も出来ないで3ヶ月待つのだったら、あらためて費用を出すから
もう少しプランを考えてみたいと言われ僕達も知恵をしぼりながら、
彼の希望を取り入れた新しいプランをまとめた。

結局のところ計画変更を提出し、再度着工することになったのだが、
実はこの住い、面積的にはあまりいじっていないが考え方をかなり変更した。
もう、ほとんど二回設計したようなものだった。でもそれがよかったのだと思う。

Mさんご夫妻にも満足していただきとても喜んでいただいた。
その後、本当にたくさんの計画を紹介していただき、
なんとか失敗をしないで設計の仕事を繫げてきた。



久しぶりに訪れた「M邸」。RC造の建物だが外部にアウサレーション式の
外断熱が施されているため壁は櫛引の左官仕上げになっている。
特注で制作した木製サッシや、根を張り風景となじんだ植栽と共に
風合いがよく似合っている。

個人邸なので内部はご覧いただけないが、どの部屋も新築した時と
まったく変っていない。3層吹き抜けのホールから眺める風景は
当時の苦労を感じさせないほど純粋に美しかった。

Mさんご夫妻と僕は少し歳をとったけれど、計画中高校生だったご子息は
大学を卒業し、今は社会人となってずいぶんと逞しくなられた。
丁度お邪魔した時はヨーロッパから帰国されたばかりだったが
びっくりするくらいカッコイイ大人の男になっていました。

2010年3月22日月曜日

雑草

 

事務所の前庭は土を攪拌して、数種類を混合した芝生の種を蒔くのだが
種の中に一般に雑草と呼ばれる種が混入している。

洋芝は温度が10度以下になると発芽しないため秋に種を蒔く。
秋に芽を出した芝は冬の間枯れずに成長する。だから事務所の庭は
冬の方が 緑が豊かになる。

しかし、冬が終わりに近づき、日差しが強くなる頃、芝生の間から雑草が芽を出す。
いよいよ出てきたかなと思う間もなく、あたり一面雑草だらけになってしまう。
ここから芝生管理をしているスタッフK君の悪戦苦闘が始まる。
私も手伝って草引きをするのだが、とても追いつかない。
抜いても抜いてもまた翌日には新しい芽が出てくる。
少し放っておくと えらいことになってしまう。

「雑草」とは人間の生活範囲に人間の意図にかかわらず自然に繁殖する植物の事ある。
Wikipediaにはそう書いてある。特定の分類群を示すものではないが、人間の活動によって
強く攪乱を受けた空間を生息場所とする点で、共通の生態学的特性を共有することが多い。
転じて、重要視されないたくましい存在として、比喩に用いられる。

これらは分類上は多種多様な植物からなる群であるが、繁茂状況によってはこれらに付随して
生息する動物群も存在し、昆虫やそれらを餌にする蜘蛛などの節足動物・ネズミ等の
小型哺乳類・小型の鳥といった小動物が生活する格好の場所を提供するとも書いてある。

確かに庭には小さな昆虫類がいるし、それを捕食するスズメ、キジバトなども我が庭には飛来する。

その雑草の定義のなかに以下のようなことが書いてあった。
「畑、果樹園、庭園、芝生」など、人間がある特定の植物の育成を目指してる場所へ、
人間の意図に反して勝手に侵入し、成長、繁殖する植物。繁殖が激しく、狙いとする植物の
育成に邪魔にある場合、集中的に駆除の対象となる。

うーん!まさにその通り。K君と私は雑草にとって憎たらしい敵そのものだ。
このままほ放っておいたらどのように変化するのか試してみたい気もするのだが
日々管理しているK君に許してもらえそうにもない。

進化論的なことまで踏み込むと面白い話がたくさんあるようなので、
そのあたりはまた次の機会に書きたい。

昭和天皇は「雑草という名前の草は無い」と仰られたそうだが、どんな草にも名前があり
人間の都合で邪険に扱うような呼び方をすべきではない、という意味。
和辻哲郎も「ヨーロッパには雑草がない」とヨーロッパへ向かう船上である生物学者から
聞いたとある本に記している。


 

数年前、そのK君とドイツ、オランダを旅した折、ベルリン郊外の新しい
建築群を見に行ったのだが、その現代建築の周りに日本では雑草と
呼ばれるような植物が密生していた。
しかしそれは引き抜かれることも無く小さな紫や薄紅、黄色などの
花を咲かせており、モネの有名な「日傘」の女性の足元を彩る草花と
イメージが重なり、とても美しい風景になっていたことを思い出す。



明日の朝、出勤したら庭の手入れをしているであろうK君と
この話をもう一度してみようか。彼も覚えてくれているといいのだが。。

でも芝生の合間からどんどん芽生える植物達を見ると可哀想だけど
無性に抜きたくなってしまうんだよなあ。


  

2010年3月17日水曜日

地鎮祭


3月19日金曜日は先日施工会社が決まった集合住宅の地鎮祭が行われる。

よく耳にする地鎮祭は家を建てたことのある方ならご存知だと思いますが
簡単に説明すれば工事を始める前にその土地の神(氏神様)を鎮め
土地を利用させてもらうことの許しを得る儀式で、神を祀って工事の
無事を祈る祭事ということです。

大きい工事になれば地鎮祭も立派な祭事が執り行われる。

独立して最初に設計した住宅の地鎮祭も思い出深いものだったが、
集合住宅などの大型工事は地鎮祭も建築のプロの集まりみたいな
雰囲気でみな手馴れているせいか、粛々と祭事が進んでいく。

その集合住宅の地鎮祭での出来事なのだが、大掛かりな工事だったので
参加者も多かった。その中で施工者であるゼネコン代表者の
玉串奉奠(たまぐしほうてん)の際、工事関係者10名が一斉に立ち上がり
拝礼の後、全員そろって拍手を打ったのだが凛とした空気の中、
乾いたその拍手があまりにも揃って見事で感動してしまった。
何か良い仕事をしてもらえそうな予感さえしたことを覚えている。

もちろんすばらしい建物が出来上がったのは言うまでもない。

写真はフレンチレストランとそのシェフの住い(RC3階建て)の
地鎮祭の様子です。

   
左写真 献餞(けんせん)神に祭壇のお供え物を食べていただく儀式と、右写真 穿初(うがちぞめ)
施主が砂山に鋤を入れる様子。

玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行う施主。 祭事が終わりひと安心の施主と設計者。
連休あたりには牛窓で進めている木造住宅の地鎮祭を行うことになるだろう。
工事の無事を祈りながら新たな気持ちで建築に向かい合ってもらう為
事務所スタッフも出来る限り地鎮祭に出席するようにしている。
若いスタッフはこのような経験がないことが多いので始めての時は感動します。



2010年3月13日土曜日

フルーツポンチゼリー

  
 
昨日、取引先のN社長からみなさんで食べてくださいと
フルーツゼリーをいただいた。

蓋のところに「山口果物」と私と同じ苗字が書いてる。
知らなかったのだがこのお店とても美味しいと評判らしい。

男っぽい工務店の社長がどうして女性が喜びそうなものを
知っているのか?(N社長ゴメン!)
以前いただいたイチゴ大福もとても美味しかったけど。

食べてみるとこれは美味しいです。びっくりしました。
ゼリーがゼラチンや寒天でないことはすぐにわかります。
フルーツの甘味とジューシーさがトロトロのゼリーとよく合います。
ゼリーからフルーツのエキスのような味と香りが立ち上ります。

お店のHPによれば、果物を漬け込んで作った自家製シロップを
海藻と植物のブレンドゼリー粉を使ってゼリーにしているそうです。

この一品も事務所の「お持たせ」に使えそうです。
N社長ありがとうございます。

山口果物

大阪市中央区上本町西2-1-9宏栄ビル1F
06-6191-5450

www.fruit-garden.net/





2010年3月12日金曜日

 もうサクラが満開!?


大阪駅前第一ビルにある中央郵便局で所用を済ませ、
たまには地上を歩いて事務所に帰ろうかなと外に出たら
エッ 桜が満開!?と思うほど枝一杯に薄ピンクの花びらが
付いているじゃないですか!

通りを歩く人も珍しそうに写真を撮ってる。
でもよく見ると花弁が少し小さい。

  

やはりピンクは春を感じる色です。 本当に心なごむ風景ですね。
     
こんなに早く桜が咲くはずが。。。と思いつつ近くの幹に吊るされた名札を読んでみると
ベニバスモモ(紅葉李)と書かれてありました。別名赤葉桜というらしい。
西南アジア原産のスモモの雑種だそうです。


でも久ぶりに春の気配を感じました。道路向かいのヒルトンウエストの花壇では
クリスマスローズが赤紫のかわいらしい花を一斉に咲かせてました。

そうそう昨日も事務所のナナミノ木に「メジロ」が飛来しているのを見かけました。
梅田のど真ん中にもこんな自然があるのだなと感心した一日でした。


ベニバスモモはバラ科の花だそうです。



2010年3月9日火曜日

本焼杉の家


今日牛窓で計画中のKさんと最終図面の打合せを行った。
基本的に承認をいただいたので、工務店に見積依頼の準備を始めることになった。

外壁は本焼の杉板なのだが、その風情が好きだとおっしゃるお母様に
もう少し具体的に建物の雰囲気がわかるように模型を作って説明することに
した。しかしどうやったらその質感や味わい深さをだせるだろうかと思案の末
段ボールと4Bの鉛筆を使って作ることにした。

制作担当はオープンデスクで事務所に来ている専門学校生のA君。
私が教えている学校の生徒でもある。



ダンボールの筋目と柔らかさ加減がいい感じ。4B鉛筆で着色し定着液スプレーで鉛筆の
色落ちを抑えた。あえて直線の精度を押さえ、焼杉の暖かな雰囲気を演出してみた。

A君のがんばりで打合せ当日時間ギリギリでなんとか完成したのだが,打合せのの途中
A君が静々と長さ1m程のランドスケープ模型の上に鎮座したK邸の模型を運んできた。

本日はKさんのお母様も打合せに同行されていたのだが、模型をみてとても喜ばれ
是非、地元の本焼杉で家を作りたいとおっしゃっていただいた。
お母様が一番焼杉にこだわっておられたので、具体的に建物のイメージが出来た様子。


エントランスまでのアプローチは木製の縦ルーバーを取り付ける予定なのだが
その雰囲気もよくでてます。

敷地のすぐ近くには焼杉を使った手塚貴晴+由比さん設計の「牛窓のギャラリー」が
あるのだが、同じような焼杉を使いながら出来るだけ質感の違う建物にしたいと思う。

お母様の妹さんは欧州在住の版画家で、その作品を玄関土間に飾りたいと考えている。
エネルギッシュで圧倒されるほどの存在感がある作品を建物がどう受け止めてくれるか
悩ましいのだが、現地に移り住んだら畑を耕したいというKさん一家のために、牛窓の
自然と共に暮らす肩の力を抜いた「農家」を僕は作りたいと思う。

A君、喜んでもらえて良かったね!自分が作った作品をお客様から直接褒めていただく事なんて
なかなかないのでいい刺激になったのではないでしょうか。

4月半ばの着工に向けてあと少し。いい住いを作るためにスタッフ全員頑張りましょう!







2010年3月4日木曜日

リノベーション

 

今、私の事務所で進行中のプロジェクト。
二つともリノベーション案件です。

住宅の方は大掛かりなフルスケルトンリノベーションです。
今まだ敷地の測量や平面計画が始まったばかりで来年2月の完成を目指します。

方や昭和40年代のコンクリート集合住宅。
エントランス周りが東京原宿の同潤会アパートを髣髴させる佇まいです。
こちらはこれからイメージをまとめてプレゼンテーションをします。

他にもう1件集合住宅のデザインリノベーションが進行中ですが、
これからこのような仕事が増えていくんだろうなあと実感しています。

その集合住宅を調査した帰り道、JR神戸駅を眺めていると
なんとなくどこか似てるなあと感じたのがエリエルサーリネン設計のヘルシンキ中央駅。
   
左が神戸駅右がヘルシンキ中央駅。神戸駅って北欧の匂いしません?


内部の雰囲気も「なんとなく」ですが似てます。テナントが「がんこ寿司」というあたりが
関西風ではありますが。。。

 
なんか雰囲気あるでしょう?もうちょっとデザインに気を使っていただけたら
ものすごくいい感じなんでしょうけど。

神戸駅は昭和5年竣工。設計は当時の鉄道省、数少ない戦前に建てられた駅舎です。

30年くらい前にまだ大阪には住んでいないころ、出張でこの神戸駅へ来たことがあって
その時、駅から山手に歩いたところに「雅叙園ホテル」という古い洋館ホテルがありました。

年配の執事のような方がサービスしてくれる中華粥を夏の朝一人だけで食べました。

古ぼけた天井ファンが回るメインダイニングは中庭に面しているのですが、

むせ返るような植物の匂いの中、静まり返ったその部屋で

一人食べた記憶を今でも鮮明に覚えています。


香港あたりの小さなホテルで朝食を食べているような気分でした。
残念ながら震災でその古い洋館は無くなってしまいましたが。

          
ついでといっては失礼ですがミラノ中央駅の写真も載っけておきました。