2010年8月28日土曜日

暑気払い




とんでもなく暑い今年の夏。

暑気払いに特製チキンカレーを作ってみようと思い立った。
しばし仕事を忘れ気分を変えるために、料理に集中してみようと考えたのだ。
20年ぶりに作るカレーだ。上手く作れるのだろうか?

昔、無謀にも洋食レストランのオーナーシェフ夫妻に食べていただいた事があって、
その際、凄く美味しい!(ウソに決まってる!)と言われたことを真に受け
自分は料理が上手いんだと、勝手に思い込んでしまった経緯のカレーなのだ。

カレー作りはスープとガラムマサラが命とばかりに、鶏がら、香味野菜、生姜などを
グツグツ煮込むことから始める。5時間ほど煮込んで裏ごしし、チキンスープを作った。

基本的に市販のカレー粉は使わないので、香辛料を混ぜてルーとガラムマサラを作る。
今回使ったのは体調を保つためのハーブを中心に写真の種類(カルダモン、クミン、
コリアンダー、ターメリック、パプリカ、クローブ、シナモン、ローレル、ジンジャー、唐辛子)
先程のチキンスープに炒めた玉ねぎ、生姜、鶏肉の手羽元、手羽中を加えさらに煮込む。
途中、マンゴーチャツネ、隠し味のケチャップ、ウスターソース、醤油を加える。
急に作ろうと決めたものだから、「ギー インドの澄ましバターの一種」が手に入らず
サワークリームで代用した。

なんだかんだと結局3日がかりでやっとカレーは完成した。
このカレーにはバターライスかナンがいいのか悩んだが
食欲の方が勝ってしまい、そのまま白いご飯にかけて食べてしまった。


相方はシャンパン飲みながら、カレーだけで2杯半食べてしまいました。
(シャンパン飲みながらというのがミソだけど。。。)

翌日、事務所のTさんにも食べてもらったのだが、スパーシーで美味しいと。。。
上司が作ったカレーに不味いとは言えないもんなあ。


私としては20年ぶりに作ったカレーにしてはイケテルのではないかと。。。。。

まあ暑気払いには充分なりましたが。





2010年8月25日水曜日

フレンチレストラン 「エテルニテ」




4月にオーナーシェフ夫妻からお話をいただいて、
私とスタッフのTさんを中心に計画を進めていた
フランス料理店「エテルニテ」の改修工事が今月30日から始まります。

工事は1週間ほどで完了しますが、コンセプト作りからスタートし
4ヶ月の間、打合せを重ねながら計画を練り上げていきました。

テーマは「熟成」。
お店の名前 エテルニテ は「永遠」という意味。

お客様とお店、取引先とお店など、長くよい関係を築くためには
お店も成熟する時間が必要ですし、それは永遠に続くものだと思います。
フランス料理に不可欠な赤ワイン、よいワインほど熟成に時間がかかりますし、
素晴らしい味わいや余韻を残してくれるものです。

今回、ワインの「熟成」過程を、フランスのステンドガラスやイタリアのガラスモザイクタイルの
微妙な色の変化を使ってインテリアに表現しました。

今までなかったソファ席やグループで寛げるスペースも用意しています。
特別な時間をゆったりと過ごせる場所を一層充実させました。

           CGパース制作 スタジオクランツォ

9月10日のディナーから営業を再開されるので、美味しいフレンチを楽しまれたい方
是非伺っていただきたいと思います。

ご存知の方も多いと思いますが、レストラン エテルニテはミシュラン「一つ星」です。
レストラン エテルニテ
大阪市西区靭本町2-5-12
TEL 06-6443-0706







2010年8月18日水曜日

版築お披露目




8月の初め、施主始め事務所スタッフ、学生などが手伝って施工した版築壁の
型枠を取り除く日がやって来た。

養生している間、内心ヒヤヒヤしながら気になってました。
施工をしてくれた左官屋さんも、工事が終わった後、
本当は今直ぐにでも型枠を外して、どうなっているか見てみたいと
ポロッと本音を漏らしてました。

やっと今日、型枠解体が始まりました。

徐々にその姿が現れてきます。想像していた以上にシャープな印象。
出来るだけ型枠の板目に合わせて突き固めて欲しいとお願いしていたのだが、
まさにその通りの出来栄えで、私のイメージしていた通りになっていた。
これで表面が少し風化して、中の砂粒や鉄粉、ワラスサが顔を出してくれると言うことなし!
 
まだ、乾ききっていないので同色系の積み重ねに見えるが、
途中に幾つかの混ぜ物をしてあるので、時間が経つとその特徴が出てくると思う。

玄関の通り土間からみた版築。真ん中のスリットに強化ガラスが入ります。
その手前には黒い玄昌石の土間に薪ストーブが据えられます。
この状態でも完成後の暮らしぶりが見て取れる。
敷地の草刈をするとこのスリットの向こうに瀬戸内の海がチラホラ見える。
一つ一つ、人間の手を使って作り上げた建築材料がこの家を完成させていきます。
その痕跡があちこちに残っている家なんてそうそう出来るものではありません。
施主のKさんは明日現地へ行かれるそうですが、
手で触ってその感触を楽しんで欲しいと思います。
この壁はすぐに養生用のシートで覆ってしまうので、また当分見ることは出来ません。
完成まであと1ヶ月少々。これから建物はどんどん変化してきます。
毎日見てても飽きません。
版築が思い通りだったので、ちょっとほっとした1日でした。







2010年8月15日日曜日

casa・M




このところ休日がまったくない私を見かねて相方が食事に誘ってくれた。

実をいうと、ここ1年程ご無沙汰している料理店があちこちにあり、
一軒ずつ巡礼のように行脚して、忘れられないよう
「生きてますよ」とアピールしているのだが、今回はオープン初日に伺って以来、
1年数ヶ月ご無沙汰していた長堀橋の「casa・M」へ出かけた。



店主の山田さんとは西梅田にある「ブルディガラ」の支配人をされているころからに付き合いで、
事務所スタッフとのウイークエンドランチやお客様との食事でずいぶんとお世話になった。


もともとホテルマンなので折り目正しい、穏やかな人だ。そして独特のペースを持ってる人!
「ブルディガラ」のあと、幾つかのお店を経験して独立されたのだが、
美味しいフレンチやイタリアンを良心的な価格で食べさせてくれる店を作った。
だから今回はしっかりとお店のコース料理を紹介しよう。
写真のイチボ肉の料理のみ別料金ですが、
デザート2種類も付いて税込み5250円のコースです!すごいお値打ち価格だと思いますよ!

左はアミューズのバーニャカウダ。あまりニンニクが強くなく上品な味。美味しいです。
石垣島の「スーナ」、泉州の水なす、オランダの黒にんじんなど入ってます。
右は鱧の三種類の前菜。ウニの海水ジュレがかけてあったり、
ローストして万願寺唐辛子と西洋ワサビ添えとかバルサミコを使って蒲焼風と凝ってます。

温かい前菜は「リ・ド・ボー」(サマートリュフのペーストと合わせてパン粉焼してある)
下には無花果のピューレが敷いてある。トリュフの香りがたまらん。美味です。
右は「イカとボッタルガのカッペリーニ」さっぱりとして口直しに丁度よい。

コースのメインはカナダ産のオマール海老。
海老味噌をつかったソースにリゾットをからませて焼いてあるパートと
爽やかな野菜とシャンパン蒸しした身を合えてある。
濃厚さと夏らしいさっぱり感のマッチングが面白い。

ちょっと物足りなかったので熟成したイチボ肉をローストしてもらった。
カマルグの塩で食べる。熟成した肉の旨みが口に広がります。
何よりも感動したのは「付け合せのスライスしたジャガイモ」
こんな美味しいジャガイモは今まで食べたことがないと山田さんに話すと
スライスしてローストしてるだけではなく、ブイヨンに漬けて寝かせて味を馴染ませ
それをじっくり低温でローストしているのだそうだ。
付け合せのジャガイモにもそんな拘りがあるなんて、
久保田シェフなかなかやりますね!
デザートは宮崎産マンゴーのアイスクリーム。ざくろの実に見えるのはタピオカです。
最後のエスプレッソのゼリーも緩んだ胃袋をギュッと締めるのには丁度いいです。


フレンチもあちこち食べ歩きましたが、ここの料理はシェフの熱意が伝わる1軒です。
普段、あんまり料理の中身の事は書かないのですが、このお店はお奨めしたいので
あえて詳細に掲載しました。
美味しい料理と山田さんお奨めのワインが飲めます。
また近々お伺いして、今度はシェフの久保田さんとゆっくり話してみたいです。


casa・M  大阪市中央区南船場1-11-19  プレサンス心斎橋ザ・スタイル1F
        06-6226-1885
       http://www.casa-m.jp  






2010年8月13日金曜日

コルテン(コールテン)鋼




好きな建築材料の中にコルテン(コールテン)鋼「耐候性鋼」というものがあります。


簡単に言えば錆びた鋼の事ですが、この鋼材、その表面に保護性錆(安定錆)を
形成するように若干の合金元素(銅など)を添加した化学成分を持つ低鉄合金鋼のことで
普通鋼に比べ4~8倍の耐候性があります。

表面の錆層の下部に極めて緻密な非晶質(アモルファス)層が形成され、
この層が錆の進行を抑制する働きがあります。
そのため一定期間が過ぎると、保護性錆がバリヤーを作り
空気中の酸素や水による錆の進行を防ぎます。

一般的には橋梁、鉄道レール等に使われるものですが、建築仕上げ材料として
世界中で使用されています。
素材そのものの美しさ(錆が美しいと認識してもらわなければいけませんが)、
その存在感は建物のイメージを決定付ける力を持っていると思います。

スペインやカリフォルニアなど乾燥した地域ではきれいな保護錆が
出来やすいと思うのですが、日本のように湿度が高く、雨が多い場所では
錆が流れやすく、あまり美しいとは言えないかも知れません。
大手鉄鋼メーカーの方と話してもやはり錆に対するクレームが時々あるそうです。

そんな中、「東野田プロジェクト」のコンセプトを考える中で(鋤、鍬)といった人と鉄の関係を
表現する方法として、このコルテン鋼を玄関ドアやその周辺に使うことにしました。


ただ、初期錆びの状態で鉄板を使用すると、多くの方が利用する玄関で
手や服が汚れてしまうため、表面を薬品処理して安定させた材料を使用します。

  
薬品処理したコルテン鋼の表情。

時間をかけて自然に錆を出すのがベストですが、今回は工期が決まっている以上
そこまで待てないのが現実です。
事務所でもコルテン鋼のサンプルを頂き、野ざらしにして実験していましたが、
なかなか思うように錆びてくれません。

そんな話をサンプルを見せながら「焼杉の家」の施主Kさんに話していたところ
自分の家の玄関ドアにどうしても使いたいということになりました。

かなり重いのでハンガー吊の引戸にしましたが、焼杉、版築、FIXガラス越しに見える
スイス在住のアーティストのリトグラフ、珪藻土の壁、玄昌石貼りの床がある玄関土間に
決して負けない存在感をだしてくれるのではないかと思っています。













2010年8月10日火曜日


縁とは何とも不思議なものだと思う。

ある日突然、今までまったく知らずにいた方と何かを介して知り合う。

それは仲介者であったり、同じ趣味であったり、同じレストランで食事をする度
一緒になる方であったり。。。

そんなきっかけの後、会話が進むとこれまた知り合うべくして知り合ったというか
「こじつけ」かもしれないが、どこかに強い接点がある。
その接点は互いの距離をとても近いものにしてくれる。

今、設計を進めている「渦森台の家」の奥様は、偶然にも職場が私の事務所のすぐそば。
そのことがわかって、急に距離が近くなったような気がする。
「今から5分後に事務所へ伺います。」「わかりました。お待ちしております。」の会話で
何となくではあるが古い知り合いだった気分にさせられる。
いつでも相談、打合せが出来る距離だからだろうか。


振返れば海が見える神戸の山の手。


同じ時期に紹介されたMさんご夫妻。神戸の山の手にお住いで、
なだらかな坂の向こうに港が見える敷地に、新しい住いを考えておられる。

私は長崎の生まれだから坂道がとても懐かしくて好きなのだが、
特に振返って港が見える風景は実家のある街並みと相通じるものがあり、
嬉しくなってしまう。
Mさんご夫妻と先月下旬に初めてお会いした時、
そんなお話をしたら奥様が「私も長崎で生まれました」とお話された。

お父様の仕事で長崎に赴任された時にお生まれになったそうで、
そう長くはお住いではなかったそうだが、これまた不思議なことに
私が毎日通った中学の通学路沿いにお住いだったそうだ。

また食べることがお好きで、ちょっと遠いけど私のお気に入りで
マメに足を運ぶ苦楽園の鮨屋に、時々伺われているそうで、
それだけでもなんだか他人じゃないような気分になってしまうし、
もの凄くいい設計プランが出来そうな予感がするゾ!


新しい出会いとは、なんと楽しくて人生を刺激してくれるものなんだろう!

2010年8月9日月曜日

版築施工





8月5日、牛窓の現場では、特別にお願いした森材木店での焼杉実演見学と、
版築施工が始まり施主のKさんご家族、スタジオクランツォ、
版築を手伝う学生など大人数になりました。

学生達は版築を手伝う合間、近くの犬島アートプロジェクト見学をしてもらうことにしました。
焼杉、犬島の様子は近々スタッフブログで誰か書いてくれると思います。

さて、版築ですが、左写真の中央部分を施工します。
中央の柱に挟まれた部分にはガラスのスリットが入り、
その室内側には薪ストーブが置かれることなっています。

版築は高さ2メートルまで積み上げ、その上はハイサイド窓になります。
右は版築を積み上げる順番を書いたもの。
積み上げる途中にワラスサ、鉄粉、土の比率を変えたものなどを挟みます。


本日施工範囲まで型枠を作っていただきました。
施工前にみんなに段取りを説明しています。
版築の施工指導は倉敷の古民家再生工房の仕事をよくされている
左官職人さんにお願いしました。
とても暑い日でしたので、休憩を多めに取るようお願いして作業スタートです。

間に挟むワラスサと幾種類かの突き棒も作っていただきました。
左官の親方と私で、版築に使う土の湿り具合を確かめながらの作業です。
篩いにかけた敷地内の赤土、真砂土、石灰を加え充分に攪拌したあと、適度のニガリを加えます。

1層目から3層目までは三和土(タタキ)の配合で仕上げます。
三和土とは土、石灰、ニガリを混ぜたもものですが、牛窓で一般的に行われている
配合で混ぜていただきました。
本日は1段目から60cm積み上げて終了。
少し時間をおいて、第2回目の作業を行いますが、
完成するまでには相当時間がかかると思います。
学生達は版築の実作業、焼杉の制作実演見学、犬島プロジェクトの見学など
非常に充実した一日ではなかったかと思います。
住宅の工事現場を真剣に見学したのも、初めての経験ではなかったかと思いますが
出来ればよい刺激を受けて、未来につなげて欲しいと思います。




2010年8月1日日曜日

2つのリノベーション



今、事務所では新築、店舗設計以外に住宅のリノベーション設計を2件抱えています。
2つとも私が中心で計画を進めています。

一つはかなり大掛かりで、昨年の10月から計画がスタートしてまだ設計中です。
施主ご夫妻はとても建築に理解があり、信頼関係をしっかり構築しながら進めています。
とてもやりがいがあり、内容も非常に充実していますし完成度の高い仕事になるはずです。
スタジオクランツォが手がける、リノベーションの代表作になるのではないかと思っています。

個人的に好きな「C社」のソファや上質の革張り椅子を使っていただくことになっていて、
全体に洗練されたソフィスケートな空間を作ろうとしています。

もちろん私一人では対応しきれませので、スタッフ2名がサポートしています。

改修前の写真はお見せで来ませんが、C社の家具を組み込んだ
リビングルーム改修後のイメージCGパース。(CG制作スタジオクランツォ)
このデザインもスタジオクランツォスタイルの1つです。


もう一つは飛び込みで入ってきた、集合住宅のインテリア改修設計依頼です。
飛び込みといっても、神戸でずっとお付き合いをさせていただいてる方からの紹介です。

先に紹介した計画とは施主様の考え方も施工内容もまったく異なる案件です。
じっくりとヒアリングする時間がなく、工期もそれほどありません。
近くに車を止める場所がない山の手地区ですので、
打合せは電車とバスを乗り継いで行きます。

お話をいただいてから、ご夫婦とゆっくりお話する間がなく、
また確定的なインテリア設計コンセプトが見つからぬまま、
当初はお断りした方がよいのではないだろうかと、思案しながらバスに揺られてました。

とにかく一度じっくりお話をさせていただきたいとお願いしたところ、
「夜、食事でもしながらお話しませんか」とご自宅に招いてくださった。
単身赴任されている東京から、この日のためにお帰りになられたというご主人とお子様を交え
鮨をつまみながらお話しするうちに、絡まった糸がほぐれ始めた。

ご夫婦は普通にいつもと変らぬ食事風景を見てもらい、自分達のライフスタイルを理解して
もらうことが、多くのリクエストを出すよりも話が早いと考えられたのだろう。

こちらが一方的な想像だけで肩にものすごい力が入ってしまい、見えるものも見えなくなっていた。

それから1週間、やっとプランがまとまり始めている。
それは「日常の中に見える小さな幸せをしっかりと抱きしめられる空間」であるような気がする。