2010年9月29日水曜日

完成間近




牛窓の「櫻山居」へ仕上の検査に行ってきました。

朝11時頃現場へ到着して、玄関土間へ入った瞬間
吹き抜けから差し込む太陽光と、土間の南側にある
ハイサイド窓から柔らかな光がこぼれ落ち、
ワラスサ入りの珪藻土の壁に美しいシルエットを作っていました。

実をいうとこれは設計時に計算していた光景です。
上手くいきました。やれやれひと安心です。


アプローチから見上げる山櫻とクヌギの大木。
左端の黒っぽい柱は電気の引き込み柱であるH型鋼。
細いポールは仮設ですので完成後撤去します。
右の写真は北側の木立に包まれている「櫻山居」。実をいうとこの足元に古墳があります。
 

土間に薪暖炉が据付られました。今年の冬はこのストーブを囲って
酒が酌み交わされるのでしょうか。床は黒のスレートなのですが
まだ養生をしてあります。
外玄関は焼杉を使った折上げ天井にダウンライトが仕込んであります。


2階の展望風呂の浴槽に座って西側の風景を見てみました。
日々夕陽が沈んでいくの眺められます。羨ましい風景です。
道路向かいのオリーブ畑では随分実が大きくなってもうすぐ収穫のようです。


また一つ建物が完成していきます。
工事に携わっている職人さんたちにはとても好評らしい「櫻山居」
施主のKさんご家族に気にっていただけるといいのですが。

少しずつ秋の気配を感じる牛窓です。









2010年9月28日火曜日

食のつながり



先の週末、遅くなった夏休みを東京で過ごした。

というのも、日本で一番予約が取れないと巷で言われる
港区白金台の三ツ星フレンチ「カンテサンス」のランチ席が確保できたから。
朝の新幹線に乗り、品川駅からそのままお店へ直行!

この店のシェフソムリエをしている市村さんは大阪のフレンチ「ベガス」時代からの知り合い。
関西人らしいとてもアットホームで気さくな人柄だ。

「カンテサンス」のことはあまりにも有名だから、あえて内容は書きませんが、
確かに岸田シェフの魚、肉の火入れはすごいなあの一言。

この人ホンマに天才やわ!

特に美味しいなあと感じたのは大阪るり渓の牧場から毎朝空輸するというヤギのミルクで作るババロア。
主役は南フランスのオリーブオイルとブルターニュの塩なんだけど、このババロアがあるからこそ
成立している料理だと思う。
撮影禁止なのでお店、料理の写真はありません。食べログでも見てください。

もう一つ、料理ではなくカトラリー。席に着いたときから気になっていた。
ポルトガルのCutipolというブランドだったと思いますが、間違ってたら市村さんごめんなさい。
岸田シェフ自ら選んだものだそうですが、非常にシンプル(どちらかというとシンプル過ぎるかも)なんだけど
妙に存在感があります。

食後、市村さんから「夜は嘉瑞のお鮨ですか?」と聞かれ、いえいえ明日のお昼に食べに行きますよと
返事したら、「えっシェフと僕も明日行くんですよ。」とちょっと驚いた様子。
最近東京のお鮨あちこち食べたけれど、「嘉瑞」はやっぱり美味しいという。
それで岸田シェフと食べに行くことになったそうだ。それも同じ日の同じ時刻に!

「じゃあまた明日!」とカンテサンスを後にしたが、初めてお会いしたシェフにも妙な親近感を覚えた。

嘉瑞つながりかな?

翌日上野毛駅からぶらりぶらりしながら「嘉瑞」へ。
僕達が少し早く着いたので、ちょっと肴を用意してもらい、久しぶりに話を伺う。

大将「堀内さん」の魚に対するこだわり本当に半端ではない。
とにかく美味しい最高の魚を手に入れ、最高の状態で握る。
このことだけに徹している。
ここのお鮨は本当に余韻があります。

赤身と中トロ、160キロほどのマグロらしいけど大将はもっと小ぶりのマグロが好きらしい。
ふあふあ煮穴子と干瓢と穴子の海苔巻き。
どれを食べても美味しいの一言。
大将の手元を凝視する岸田シェフの真剣な横顔が忘れられません。
シェフもいい魚があると日本中何処へでも漁師さんのところへ出向くそうですが、
そんなフレンチシェフはめずらしいと大将の堀内さんが褒めてました。
今度は11月に来て欲しいと大将からリクエスト。
なんでも「化け物」みたいないい魚が入ってくるらしい。


色々な「つながり」でたくさんの方と知り合いになれ感謝です。

人との出会いは本当に大事にしなければ。

とても充実した最高の休暇でした。






2010年9月23日木曜日

デザインの方向性



渦森台の家は明日、引越しを迎えます。

日程が非常にタイトでしたので、引渡し前の最終検査が前日になってしまいました。

リペアされたダイニングテーブルを前に、工務店の社長と二人で考え込んでるわけではありません。

施主様ご家族からはよい意味で、新しい家の匂いがしないと言われました。
なにかホッとするような落ち着く雰囲気で、木と漆喰をふんだんに使った内装を
とても気に入っていただきました。
スタジオクランツォに設計を依頼して本当に良かったと仰っていただき、
いつも以上に嬉しく思いました。

南側にアルミサッシの連窓があり、そのアルミの格子窓が部屋から見えるのが
あまり好きではないのでなんとかして欲しいというのがリクエストでした。


そこでサッシのフレームを隠しつつ、防犯も兼ねて内障子の格子桟をデザインしました。
材料は米杉です。煮亜麻仁油で拭取り仕上げをしています。

設えの家具類がアンティークな雰囲気なのでそれに合わせ、
ちょっとノスタルジックなデザインにしてあります。
そういったデザインが新築らしくないのかも知れません。
窓の外の濡れ縁はセランガンバツの板材に、雨に強い「桐油」を塗っています。
「桐油」は古くから番傘の防水などに使われる植物油です。
こちらはリビングダイニングと寝室を間仕切るオーダーの飾り本棚。
材料は米杉の柾目です。左がリビング側から見たところ。
右の写真は寝室側からですが、ベッドの少し上くらいに目覚ましなどを置けるスペースと
寝る前ちょっと読みたい本などを置く場所を作ったり、奥行きを変化させたりして
寝室が本棚の裏という印象にならないよう配慮しています。
また柾目が美しい米杉の化粧板を背板に使って、すっきりとしたデザインに仕上てあり、
非常に美しく納まっています。
寝室への出入り口となる4枚引き違い戸。材料はウォールナットで
煮亜麻仁油の拭取り仕上げです。寝室の手前の部屋は将来子供部屋になります。
本棚とこの建具を取り外すと、真ん中の柱を残して完全なワンルームにすることができます。
将来的に家族の変化に合わせ、部屋を色々な大きさに変化させて使うことが出来るよう
考慮してあります。
今回初めて本格的に自然素材や材料、植物油などを使った空間をデザインしましたが
工事の始まりから竣工まで、ある意味現場臭いといったらよいのか、石油精製品や
人工的な材料の臭いを感じませんでした。
いつもシンナー系の臭いで喉がおかしくなって困っていたのですが、
そのようなことがまったく無い気持ちのよい現場でした。いい意味でショックでした。
牛窓の「櫻山居」をも含め、これから先のデザインの方向性を
暗示する出来事であるような気がします。











2010年9月21日火曜日

Osteria e bar Piu





最近ちゃんとした食事が出来るのは、相方と一緒に居る事が出来る日曜日の夜のみ。

たまにはトラディショナルというか、オーソドックスなイタリアンが食べたいということで
何度かお伺いしている堺筋本町の「オステリア エ バール ピウ」という店へ。

日曜の夜の食事となると、そんなに選択肢があるわけではない。
ましてや普段着のように気楽な食事が出来る場所は限られている。

イタリアのミラノやローマで地元の人たちがよく利用するような
庶民的で子供がいてもOKな店に何気なく入っちゃったとい感覚。

日曜の夜、こんなオフィス街に店を開いているなんて
近場の常連さんがたくさんいるんだろうな。

スプマンテを飲みながらちょっとおつまみにオーダーした
ゴルゴンゾーラチーズを挟んだオムレツ。北イタリアの人たちが好きそう!
腹ペコだというのでもう一品牛肉のマリネも頼んだのだが、
食べるのに夢中で写真撮るの忘れた!
それぞれ小さめのポーションです。

温かい前菜はフォアグラといちじく、茸のソテー。
オリーブオイル、塩、胡椒のシンプルな味です。

プリモピアットはこれまたシンプルなトマトソースのパスタ。
パルメジャン レッジャーノが入っているのかな。口当たりがまろやかです。
太目の麺がアルデンテに仕上がってます。

セコンドピアットは大山地鶏のロースト。
これもシンプルな味付け。ニンニクが効いてとても香ばしい。
お肉も柔らかいです。

ドルチェはチョコレートのテリーヌ。
あまり甘くなく、ジェラートとの相性も良かったです。

クライアントであり、友人のN社長に女性スタッフの方たちと食事をするお店として
お奨めしているのですが、まだ実現しておりません。
とても身体に優しいスローフードの店だと思うのですが。

 
お店はシェフと女性スタッフの二人で切り盛りされてます。
ずっとご夫婦だと思っていたのですが、きっぱりと否定されてしまいました。
でも本当に阿吽の呼吸で仕事されてます!

小さな隠れ家的なお店ですが、北イタリアの家庭的な料理が楽しめます。


オステリア エ バール ピウ

大阪市中央区安土町1-6-22
06-6131-8464
 水曜定休






2010年9月20日月曜日

渦森台の家


神戸の山手「渦森台」で進めている集合住宅のリノベーション工事。
今まであまり内容を書き留めていませんでした。

特別理由がある訳ではなく、絵になり難い仕事が主体だったからです。
基本的には「自然素材を出来るだけ使った住いにしたい」と言うのが施主の希望で、
それを忠実に守るべく仕事を進めています。

以前にもブログに書きましたが、天井、壁の漆喰左官仕上げと、植物油(今回は煮亜麻仁油)を使った
オイルフィニッシュ仕上げが中心です。
木製建具の開口部は全てフロストガラスを使っています。
壁紙を一部使うのですが、それもビニールクロスではなく、紙クロスを使用しています。

ですから、工事中の室内にいてもあまり、嫌な匂い(接着剤や化学製品の匂い)を感じません。
私だけかも知れませんが、なんだかとても健康的な住いの匂いがします。


施工中の住い近くから見える神戸港の風景。夜景がことのほか素晴らしい!

ウォールナットのバー材を使ったスクリーン。もちろんオイルフィニッシュ仕上げになります。
壁、天井は漆喰仕上げ。豊後塩焼き灰しっくいの真白壁(株丸京製)という材料を使ってます。

南側の連続した開口部は米杉を使った内障子が並びます。現在建具調整中です。
これも全て煮亜麻仁油の拭取り仕上げです。
養生しているので見えませんが、床材も全て楢とウォールナットの無垢材です。
当然オイルフィニッシュ仕上げです。
正面連窓の足元には桐材のベンチが納められます。


もう間もなくこの「渦森台の家」も完成します。







2010年9月19日日曜日

愛おしさ




人にはそれぞれ愛おしいものがある。

恋人、家族、ペット、それ以外にも大事なモノ、穏やかな時間や風景。
どこか見慣れた日常生活にこそ、何気ない愛おしさを感じるものかもしれない。

僕はと言えばもちろん愛する人。それから自分で考え、図面を引いた建物たち。
必死なって考え、もがき、苦しみ、時には媚を売ったりひれ伏したり、
でもなかなかこちらを振り向いてくれない。
たかが建築、されど建築。
ある意味、男と女の恋愛感情に似ているかも知れない。

付き合えば付き合うほどわからなくなったり、不安になったり、
自分はなんて愚かなんだと自己嫌悪になったり。。。

でもこれでいいんだと、どこかで自分自身を納得させている。そうでもしないと先へ進まない。
ちょっと進んでまた悩んでの繰り返し。

「櫻山居」バルコニーに取り付ける手摺りの最終形状を施主、スタッフ、工務店の担当者とで打合せ中。
煙突の下に版築の壁が見える。

西側の佇まい。2階煙突横がバスルーム。沈みいく夕陽が見渡せる。
玄関、エントランス廻りの仕上げがまだ残っています。

そんなもがき苦しんだこの「櫻山居」も、まもなく完成しようとしている。
建物が完成し、引渡しの前日、どの建物も独り占めさせてもらう時間を
施主、工務店にお願いしている。今までの時間をもう一度振返りたいのだ。
男はなかなか諦めがつかないから。。愛おしいのですよ。

身勝手だが設計そして工事中の間、その建物は自分のモノと思っている。
だから、ああしたい、こうしたいという欲望をなんとか実現しようと試みる。
施主や工務店の方々に無理なお願いをする。
それは愛おしいから。もっと美しく、いや完成度の高い建物になって欲しいから。
別嬪さんにして、お施主さんに渡してあげたい。それだけです。


建物北面の焼杉壁。スタッフのTさんが図面と現場納まりを照合中。

愛犬が暮らす南側の土間部分。焼杉と黒く塗られた軒裏が美しい。

版築と床石施工中の通り土間。版築のスリット部分には
防犯ガラスを組み込んだ複層ガラスが嵌め込まれている。
櫻山居の横手に広がるオリーブの畑。
昨日は「コツコツ、コツコツ」という木に穴を開けるような音が敷地の隣で響いていた。
キツツキの仲間の鳥だろうか。

2010年9月14日火曜日

桃太郎ぶどう




牛窓「櫻山居」の施工をお願いしている地元工務店の「元浜組」小橋さんから
素敵な贈り物が先程、事務所に届きました。


地元、瀬戸内市でハウス栽培している「桃太郎ぶどう」という新作の果実です。
見た目と大きさははマスカットよりひと回り大粒。

よく見ると、プラムや、桃のようなポッコリとした盛り上がった部分があって
だから桃太郎なのかな?皮のまま食べれます。種もありません。

肝心の味の方は甘ーいというよりもジューシー。香りもよい!
ゼリーなんかにしても良さそうです。


カタチはまん丸ではなく、ちょっと赤ちゃんのお尻のようなまるみがあります。  

しかし手に持つとズシリと重い。その分瑞々しいのだろう!

今週末には施主のKさんと現場打合せがあり、牛窓へ伺う予定。

岡山も美味しいものがたくさんあって幸せですねKさん。

小橋さん気を使っていただいてスミマセン!今度現場行く時は大阪の美味しいもの持参します。
















2010年9月13日月曜日

レストラン「エテルニテ」完成





9月中に完成予定プロジェクト3ヶ所のうち、1つ目が完成した。

当事務所でデザイン、監理をしていたフレンチレストラン「エテルニテ」なのだが、
9月10日(金曜日)夜、予定通りオープンした。

事務所若手のTさんにある程度任せながら、4ヶ月かけて
コンセプトを具現化してもらった。
オーナーシェフからはフレンチレストランらしい佇まいと設えを要望されていたのだが、
結果として「満足出来る仕上がりになりました」とお褒めの言葉をいただいた。


テーブル間のスペース確保と、コーナースペース、
グループ利用がしやすいブースを新たに用意した客席。
ワイングラスとバカラのカラフェが飾られたグラス収納。


オープン後に来店される常連のお客様達がどのように評価されるのか
気になるところではあるが。。。。


エテルニテの工事経過様子はTさんがスタッフブログで詳しく書いていますので
一度覗いて見て下さい。





2010年9月11日土曜日

櫻山居とキャンティの谷





「櫻山居」のある牛窓、オリーブ畑や近所のジェラート屋さんに行く度、
イタリア フィレンツェ郊外キャンティの谷近くのモンテスペルトリ村に
暮らす女性「O」さんのことを思い出す。
フィレンツェでアパート暮らししていた頃、本当にお世話になりました。

とても面倒見がよくて、チャーミングでイタリア人の旦那が
彼女にぞっこんなのもよくわかる。

1児の母で家事をこなしながら、日本の雑誌などにイタリアの食文化や
ファッション、インテリアなどの記事を寄稿されている。

フィレンツェへ行った時は必ず立ち寄ったり、一緒に食事をしたり
食文化、ワイン、オリーブオイル、建築の情報などを教えてもらう。
僕よりもずっと年下だけど、気持ち的には頼れるお姉さんみたいな感じ。

彼女の自宅(奥の方)と弟さん夫妻の家。もともと馬小屋と農業用の
作業小屋だったらしいんだけど、時間をかけて改修したらしい。
彼のお父さんが今でもワインやオリーブオイルを作っているので
その畑のど真ん中に建ってます。
庭の向かいの丘には古いカステロ「城」が見えます。
その周りも葡萄畑とオリーブ林。なんせトスカーナですから。。。

サンフランシスコで一人暮らししている親友の「hisashi」にガールフレンドを
本当に一生懸命探してくれた。
イタリアにいる彼女が、日本在住の女性をアメリカに住む親友に紹介するなんて
なんだか地球規模のお見合い話になってどこの国でいつ紹介して、どこで会うんだ!と
ずいぶん盛り上がりました。


もうすぐ完成する「櫻山居」も古城は見えないけれど
それに負けない、すばらしい瀬戸内の風景が広がります。

日本でも、イタリアでも地元に根付いた材料で仕上げた家は
なんとも言えず美しい。






2010年9月9日木曜日

秋の気配





朝9時半頃出社すると、事務所庭の西壁に取り付けられている看板に
こんな影が出来ていた。

たいてい同じ時刻に出社するのだが、朝日が作る影がこんなにも長くなっているなんて
まったく気が付かなかった。

事務所は梅田の堂島にあるのだが、南向きの日当たりのよい場所の1階にある。

影が長くなったということは、日が南に傾いているということ。
暑い暑いといいながらも、季節は確実に変化している。

お昼休み、ランチを摂るため通りに出てみたら、もあ~とした暑さは影を潜め
少し涼しくなった風や、空の雲にちょっと秋を感じました。