2011年9月29日木曜日

ピクチャーウインドウ



「記憶の家」で進めている南側の塀工事。
もう数日で完成します。
今日はその進捗状況を確認しに「たつの市」の現場へ伺いました。

まだ住まいが建つ前なので蛇籠とコールテン鋼の塀が接道から見えていますが
長さ24メートルもある平屋の建物が完成するとまったく見えなくなります。

切り取ったコールテン鋼のピクチャーウインドウから、田畑の美しい様子が見えるのですが
それはリビングダイニング、和室、寝室、通り土間からだけのお楽しみになります。


地元の栗石。まだ埃を被っていますが、最後に洗うと美しい色合いが甦ってきます。
建物との間の庭になる部分には木立を植える予定ですが、じっくりとこの風景に
相応しい木々を選びたいと思ってます。


モダンアートのようなコールテン鋼の開口部。思い描いてた通りの風景がそこにありました。

錆が定着すると、どんな景色が見えるのだろう?


この日々変化する切り取られた風景は建築主の「Yさんご一家」だけのもの。

なんとも羨ましい。


長さ6メートルあるフルオープンの縁側にごろんと横になれば、

この開口から気持ちのよいそよ風が入ってきます。


完成は来年3月の予定ですが、お施主様、施工会社、そして私達も楽しみながら

仕事が出来そうです。


2011年9月28日水曜日

狙い通り



あるプロジェクトのデザインコンセプトに重要なのが太陽の光。
それも昼間の燦々と降り注ぐ太陽の光ではなく、
夕刻の一定時間だけ差し込む光を求めていた。

来週月曜日にプレゼンしなければならないのだが、その説明にどうしても欲しかった夕陽。

明日からは天気が悪くなっていくそうで、今日が現場でその光を確認できるラストチャンス。
午前中から打合せが重なり、夕刻何時に現場へ行けば狙いの光が見られるのかわからず
ちょっとピリピリしてました。
3時過ぎにやっとすべて打合せが終わり、慌てて現場へ向かった。

待つこと50分、やっと狙い通りの光が建物と建物の間から差し込んだ。
光は敷地の端部から直進し、隣の建物に垂直の影を作っている。
光が侵入し始めて消えていくまで約20分程。空間を演出するには充分な時間だ。

もう本当に狙い通り!これで建物の内外部空間を構成する素材も計画通りのものが使える。
ちょっと一安心。それから「記憶の家」も工務店と数字がなんとかまとまり一息つけそうです。

明日は大方積み終わった蛇籠とコールテン鋼の確認にたつの市へ向かいます。

2011年9月22日木曜日

キャラメルブリュレパイ



事務所を始めてからずっと、「プライマリー」という名前でデザインしている集合住宅の、
13棟目となる新しいプロジェクトが北区でスタートすることになった。
また、他のプロジェクトのプレゼンや数箇所で工事中の設計監理などなど
事務所も何かと忙しくなってきた。

今日はそのうちの1つ、住宅のプレゼン模型用材料を探しに材料屋さんへ出かけた。

その帰り道、いつもハードな仕事ばかりで迷惑をかけているスタッフの皆さんに
ちょっと美味しいおやつを食べていただこうと思い、またシリーズで集合住宅の
デザインが出来ることも嬉しくて梅田大丸地下お菓子コーナーへ立ち寄った。

一度通り過ぎたのにちょっと気になってまた戻って買ってしまった
京都「ガスパールザンザン」のキャラメルブリュレパイ。
なんか美味しそうだったんですよ。

パリパリの生地の中にバニラビーンズたっぷりのクリームが隠れてて
上にはキャラメルコーティングとパウダーシュガーがたっぷり。。。
とても甘そうに見えるのですが、食べたら意外とさっぱり。あんまり甘くない!
あっという間に食べてしまいました。実のところ僕が一番甘いモノが好きなのかな。


それで思い出したのがお客様から頂いた「デリチュース」のチーズケーキ。
種類はまったく違うのですが、僕の中では同じライン上にあるデザートのような気がしました。
何でだろう?そのデザートの存在感が似てるのかな?よくわからん。感覚ですね!




ブリードモーの濃厚なチーズの味が、普通のチーズケーキとはまったく別物に思えます。
大阪駅の構内に出店されているので、ときどき「お持たせ」用に買いに行きます。




スタッフのみなさん、また月曜からハードな日々が始まりますが宜しくお願いします。



2011年9月19日月曜日

蛇籠の石と曼珠沙華


今日は敬老の日、皆さん3連休を楽しんでいらっしゃるでしょうか?

たつの市の「記憶の家」では住宅を建築する前の先行工事として、
敷地南側の境界に蛇籠とコールテン鋼を組み合わせた塀工事を進めています。

連休前、施工会社より一籠だけ栗石を積んでみたので、
石の大きさや色目の確認をして欲しいと連絡がありました。

今日は午後から雨になると天気予報でもアナウンスしてました。
石が濡れると色目が変わって確認できなくなりますので、あわてて電車の飛び乗ってきました。

この栗石は地元たつの市の採石場で仕入れたものです。
その採石場もこの石を最後に山を閉めるそうです。
地元の石を使いたかったので、なんとか間に合いました。

この辺りの石は青石ばかりと聞いていたので、全体がグレーになるのではと
心配していたのですが、イメージに近い色の組み合わせでした。
これでゴーサインが出せます。
21日には加工したコールテン鋼も入荷します。

この蛇籠を3段積むのですが、万が一の崩落防止のため、
蛇籠内部に支柱を建て籠を固定していきます。(写真後部の茶色の柱がそうです)

下の写真は組み立てる前の蛇籠フレーム。明日から一気に蛇籠を積み上げていきます。

近所の田んぼではもうすぐ稲刈りが始まります。
秋なんですね。来月早々には近くの神社でも秋祭りが行われるそうです。


畦道では彼岸花(曼珠沙華)が咲き始めました。
この花、群生している姿を遠くから見ると美しく趣があっていいのですが、
すぐそばでみると案外とグロテスクです。食虫植物のような何か妖しい花です。
この花がお好きな方申し訳ありません。決して嫌いではありませんので念のため。

もともと中国から入ってきたといわれ、花、茎、などに有毒性があり
野ねずみやモグラを寄せ付けないために田畑の傍に植えたとも言われ、
またでんぷん質が多いため無毒化して飢饉時の救済食にしたとも言われています。

そういえば小さい頃、稲刈りの時期に手伝いに田舎の祖父のところへ行くと、
毒があるからこの花を摘んではだめだとよく怒られました。


自然が残っているところはいいですね。他にもムラサキツユクサや
名前もわからない小さな野草が土手に咲いていて、川面にはハヤが群れています。

Yさんのお子様「マー君」もこの地でだんだん野生児に育っていくんだろうな。

2011年9月18日日曜日

伝えたかった事



昨夜、自分達のお住まいを計画されている若いご夫婦とお会いしました。

何度かメールを交わす中で、自分の中ではある程度構想がまとまっていましたが
初めてお会いするのでそんなに詳しい話をしようとは考えていませんでした。

むしろもっと話を聞きながら、頭の中で修正箇所を見つけ出し
整理しようと考えていました。

お話の途中、奥様のある言葉が僕を揺さぶりました。
それは「建築家が作る空間に自分達の身体や生活を合わせて生きてみたい」と言われたのです。

それで、胸の中にあるどうしても実現してみたいことを堰を切ってしゃべり始めてしまいました。
機関銃のように3時間、話続けてしまいました。
だまって聞いていらしたお二人は大変だったと思います。

そんな話をする予定ではなかったので説明する準備はしていませんでした。

翌日、各駅停車の電車にゆられ、のどかな風景を楽しみながら
谷口吉生さん設計の美術館へ行きました。

本当に厚かましくて申し訳ないのですが、僕の勝手な解釈としての空間をそこに感じました。
つまり伝えたかった事をイメージする空間があったわけです。
言いたかったことが少しでもわかってもらえたら嬉しいですし、
もっとお二人の空間サイズ合わせて考えなければならないのですが、
それはまた次の機会のお楽しみにしましょう。

「空間の距離」について


「光を絞り込むこと」




「気配」


それから珍しく一人で美術館のレストランで食事を楽しみました。

豊かな空間を目の前にして食事ができることは素晴らしいですね。

マリオベリーニの「キャブ」がダイニングの椅子に使われていました。



メインの豚肉煮込みのオリーブソース、ペリエと共に頂きました。

とても濃厚で美味しかったです。

2011年9月16日金曜日

事務所にて



数日前から2羽のキジバトが事務所の庭に現れるようになった。


しきりに枯れかけた芝生の間を突きながら餌を漁っている様だ。


僕達が横を通っても逃げようとはしない。


去年、ナナミノ木に巣をかけた「つがい」ではないかと思う。


今年も巣篭もりをしようとしているのだろうか、枯れ枝をついばんだりしてる。


多分羽の色からすると雄ではないかと思う一羽が、打合せスペース前のタイルを


ウロウロ行ったり来たりしている。どうも中が気になって仕方ないようで、立ち止まっては覗き込んだり、



ガラスに足をかけたり、ずいぶんと大胆なヤツだ。


中に入りたいのか、ドアを開けてあげようかとも思ったが、鳩は寄生虫を結構持っているので


そんなに親しくするつもりはないぞ!



スタッフの話を聞いてみると毎日午後の決まった時間に飛来しているようだ。


もし巣をかけるようなら、イタチ対策を考えてあげないといけないかも。。。
しかし大胆なキジバト君だな。
新しいスタッフK君の席は外の庭が見えるところにあるのだが、
この庭凄いですね!といつも言う。初めての経験だろう。
地面から蝉が這い出してくる、イタチが庭を駆け回る
色々な鳥達が飛来する。ここは大阪駅や高層ビルが立ち並ぶ都心にこんな
自然界の出来事が起こってるとは夢にも思ってなかったようだ。
         
そして打合せに伺った「ラメゾンブランシュ」のウェイティングブースでこんな本を見けた。
「うまいもん屋」からの大阪論 元ミーツの編集長 江 弘毅 氏の本だ。
この中に地域に根を大きく張って成長する「ラメゾンブランシュ」の加藤シェフと
私が設計した新店舗の事が書いてあった。ちょっとうれしくなって思わず買ってしまった。

明日は所用があり名古屋へ向かう。雨降らないで欲しいなあ。


2011年9月14日水曜日

ヴィネリア・リンコントロ



昨夜、所用があり友人の「S 君」と梅田で会うことになっていた。
何処で会うか決めていなかったのだが、外出先から事務所に戻ってみると
1枚のきれいな葉書が届いていた。

「ヴァネリア・リンコントロ」と書かれたその葉書には横山浩之という名前があった。
数年前まで、肥後橋で「オステリア イル フィオーレ」というイタリア料理店を経営していた
横山シェフからだった。

事情があり、店を閉め静岡へ行かれたのだが、昨年大阪へ戻られたようで、
その時も葉書をいただいたのだが、タイミングが合わずなかなか彼と会う機会を無くしていた。

経営していた店にも僕は数回しか食べに行ったことがなかったのだが、なんだか僕の事を
覚えていたみたいで、時々葉書でお店の様子や自分の事を知らせてくれていた。
昨日、タイミングよく葉書が届いたものだから、せっかくならとこの店に伺うことにした。

      

このヴァネリア・リンコントロは梅新のアメリカ領事館のすぐ横、
隣はポルトガル料理店「ポルトガリア」があり、
美味しい店がたくさんある老松町通りの入口近くにある。
料理主体といよりワインに合う「おつまみ料理」を中心に、即席でアレンジもしてくれる。

横山シェフはエミリオロマーナ州、リグーリア州で修行したそうで、
以前はオーソドックスなイタリア地方料理 主体だったが、
この店では少し洗練されたイタリアンを作れられているようだ。
ちょっと個性的な人柄だが、あまり多くを語らず料理に集中される姿勢は相変わらずだ。        

新秋刀魚を軽く炙ったものを大葉のソースで 。パンの上は秋刀魚のペースト。

名前は忘れたがラビオリの一種、中には鶏肉などが入っている。
ブロードが見かけ以上にしっかりした味だった。

オーストラリア産子羊のロースト 。羊の脂がとても美味、旨みがあります。

スペシャリテのドルチェ。マロンのジェラートが濃厚でした。
写真の他にも数品頼みましたが、癖の無い食べやすくワインに絶妙にあう美味しさの料理が

楽しめます。お近くに行かれた是非立ち寄ってみてください。
www.vinerialincontro.com/

2011年9月11日日曜日

小さな村の物語 イタリア



皆さん、BS日テレ毎週土曜日21:00~21:54に放送される「小さな村の物語 イタリア」という
番組をご存知でしょうか?結構この番組のファンの方も多いと思うのですが。。

イタリアの地方の本当に小さな村の人々にスポットを当てたすばらしい番組です。
もう100以上の村が放送されましたが、僕も18話ぐらいから欠かさず見ていて、
しっかり録画もしています。

何がいいかというと、その村に普通に生活している2~3人を選び普段の生活を取材し
「美しく暮らす 美しく生きる」とはどういうことなのかを村人を通して伝えてくれる番組なのです。

公式の番組コンセプトには次のように書いてあります。

「海を臨む小さな漁村、山肌にはりつくように佇む村、雪に覆われた山間の寒村。。。。
気候や風土に逆らわず、共存しながら暮らす。
先人達が築き守ってきた伝統や文化を誇りに思いながら生きている。
人間本来の暮らしが息づく「小さな村」が今、注目されています。
古き良き歴史と豊穣の大地を持つイタリアで、心豊かに生きる人たち。
〝美しく暮らす 美しく生きる〟とはどういうことなのか。
私たちが忘れてしまった素敵な物語が、小さな村で静かに息づいていました。
番組ではありのままの時間の流れを追い、村人達の普段着の日常を描いていきます。」とあります。


そしてオープニングとエンディングに流れるテーマ音楽『L'APPUNTAMENTO』 逢びき という
タイトルで、オルネラ・ヴァニー二という女性歌手が謳っているのですが、
その曲がもうこの番組にぴったしでなんともいえず哀愁があり、自分もその村に暮らす
村人の一人になったような気になる。

この番組4年ほど前から放送されており、毎回見てて飽きないしイタリア人の純朴さ、
家族愛、故郷を思う気持ちなど「人生をいかに生きるか」教えてくれる番組です。
いつも見終わるたびに自分の人生や生き方と照らし合わせ「もっと人のために何かしなくては」と
思ってしまいます。また美しいイタリアの地方風景も見逃せません。

一度是非見ていただきたいと思います。
上の3枚の写真は録画した番組をデジカメで撮影したので、画質がよくないかも知れません。
下の4枚は僕の友人が暮らすトスカーナの小さな村とその住まい。







ご主人のお父さんは毎日この家の前を通って畑へ向かう。

一度お会いしたことがあるが、まさにこの番組にでてもおかしくない人柄だった。

自分に与えられた仕事に直向に生きる後ろ姿を今でも忘れない。



今日は午後から初めてプレゼンをする「T さん」ご夫妻がアトリエにお見えになった。

午前中にこの番組のアンコール放送があったのでそれを見て事務所に来たのだが、

その番組の影響か、今日はとても素直な気持ちで「T さん」にお会いすることができた。


(注) いつも以上に素直な気持ちでということですよ!


ご夫妻の「新しい住まい作り」に何かお役に立てることができればよいのだが。。。。


2011年9月7日水曜日

時間を刻んだ風景



今日は現場廻り。四世代家族の家では台風の影響で、足場シートをまとめていたので
外壁下地が顔を覗かせていた。
外部仕上は1階部分はレッドシダーの板張り。それに濃い色の木材保護材で仕上げをする。
2階部分は塗装仕上になる。
予算も厳しいので少ない費用の中で、出来るだけ建物に個性を出そうと色々考えて設計をした。


これから日に日に建物が変化していく。今週土曜日にはご家族に現場へ来ていただき
内装の仕上げの確認を行います。

ところでこの街に来て気になるものの一つがこのバス停。
何処にでもあるバス停なのかも知れないが、利用されるお客さんをあまり見た事がない。
おそらく朝夕は混雑するのだろうけど、昼間は誰もいない。

バスは30分おきに循環しているようですが、僕も利用した事はないけれどずっと気になっていた。
何が?って  その佇まい。雰囲気として沖縄辺りにあってもおかしくないような気がします。
空の青さといい、人気のなさといい、ペンキの荒れ具合、待合室のブロックの汚れ具合が
なんともいい味な気がして、誰もいないベンチに腰掛けてみたりして、たぶん沖縄だと
日がな一日何もしないでずっとベンチに腰をおろしてるおじさんがいたりする。
そんな風情を感じてなんだか好きな風景の一つになってます。

この風抜き用の穴あきブロックの積み方なんか高さといいテカリ具合といい とっても好きです。

駅からバス停に向かう道沿いには、古びた今は営業していないバーバーショップと
写真屋さんらしき建物が2軒だけあります。あとは民家が数軒。

さすがに夜は怖いかもしれないけれど、昼間見ているとこの街の栄華衰退を見るような気がします。
何度も書きますが、現場や初めての土地を調査するときは公共交通機関を利用します。

たぶん車で来ていたらこんな風景は記憶に残ったかどうかわかりません。
歩く事でその街の息使いや生き様を肌で感じられるような気がするのです。
成熟したこの街は人々の強いエネルギーを欲しがっているように感じます。

もう一度元気を取り戻したいんだと桜並木の古木たちが話しかけてくるような気がします。




その後、海に背を向ける家へ向かいました。こちらは阪急神戸線沿線。

街も風景も洗練されています。


一つ一つの街はどうしてこんなにも風情が違うのでしょうか?

同じ日本の街なのに、暮らし方がそんなにも異なるものなのでしょうか?

でも異なるからこそ、その街を探検したくなります。


道すがら途中の公園脇の遊歩道で名もない草の美しい花を見つけました。

なんという花なのでしょいうか?


花びらを見ると何かマメ科の植物のような気がするのですがわかりません。
ほんの数分、かがみこんで写真を撮っただけなのに、無数のやぶ蚊が襲ってきました。


あっという間に5~6箇所刺されてしまいましたが、よく見るといろいろな草花が生えてました。


現場では地下となる部分の土留め工事が行われています。
アースオーガという機械で土に穴を開けH鋼を打ち込んで行きます。

明日からは「記憶の家」で蛇籠とコールテン鋼の塀工事が始まります。


そして風景は少しづつ、秋の気配へ移動を始めたようです。