2011年12月31日土曜日

明日も出勤!?







二日程前、名古屋で計画を進めている、
若いご夫妻の住まいを打合せのため訪れた。

長時間お話をしているうちにリビング空間を
いかにデザインするかという話になった。

互いに共通認識としてあるのは余分なモノをすべて削ぎ取った
ストイックな空間であること。
そのためカウンター収納家具のみを配置し、
開口部も極力設けない。あるのは天井の一部から差し込む光のみ。
がらんとした空間だけを際立たせようと計画している。

しかし、日常生活に必要なものと余計なものをすべて削除してしまった空間の
折り合いをどの辺りでつけるのかとても悩ましい。
今はいいが年齢を重ねるとどうなるのか?その手当てはしておくべきなのか?






私としてはまず、余分な陰影をすべて消し去りたいと思っている。



たとえば、家具カウンターと扉の隙間、目地、照明器具周りの陰影、幅木など



あらゆる些細なデコボコを極力無くしたい。



不必要な陰影が本当に欲しい光の強弱や陰影をボヤケさせてしまう。



最上の光や陰だけが空間の距離感や気配を作り出す。



あらゆる部分が「表に出ないディテール」を考えなくてはいけない。











「建築家が創造する空間に身を委ねて生活してみたい」というのがご夫妻の希望。



とてもワクワクする計画なのだが、これが難しい。



内部もそうだが外部空間もシンプルだが個性的で。。。



「その場所にしか存在しない住まい」を考えなくてはならない。






少し時間を頂いて、来年早々の宿題になりました。



芦屋の「眺めを楽しむ家」も色々な事情で



大幅な変更をすることになりこれも宿題!



今年も年末年始返上で考える時間を作る。



でもそれが楽しいと思う自分がいて、



誰にも邪魔されないお正月は結構好きですね。







初詣に行くであろう大阪天満宮の参道には



4月から着工予定の集合住宅プロジェクトの敷地が



「ええもん作ってや!」と言わんばかりに待ち構えている。







今夜は大晦日。みなさん自宅でゆっくりされているだろうか?



僕も今夜くらい少し早めに仕事を切り上げて帰ろうか。



また来年も、いや明日から頑張ろう!

2011年12月28日水曜日

師走の頃










もうあと数日で今年も終わってしまいます。


毎年、色々な思いや意気込み、決心でスタートするのですが
今頃の時期になると後悔や反省ばかり。。。。

特に今年はこれまで以上に仕事に精進しようと必死になりました。
公私共に楽しむことよりも、悩み苦しむことを選択した1年でした。
その年がもう終わろうとしています。

悩み苦しんだ結果はどうだったのか?
自分自身の甘さも嫌というほど知らされましたし、
若いスタッフや思いもよらぬ仲間との別れもありました。

けれどチャレンジした結果、新しいカタチでの出会いも数多くありましたし
その結果も実のあるものとして結実しそうです。

色々な意味で世の中が変化しようとしている年でした。
そんな中、今年は3棟の建物が竣工しました。

「アーバネックス京橋プライマリーワン」
部屋数が99戸ある賃貸集合住宅ですが、あっという間に満室になって
その状態が今もずっと継続しています。


5月にはRC造の建物をフルスケルトンリノベーションし、駐車場を2ケ所増築した
「BW-H」が完成しました。
工期も9ヶ月とリノベーションにしては大掛かりで長期工事になりましたが、
完成した日の夜、クライアントご家族に全員集まっていただき、
すべての照明を点灯した時の皆さんの驚きと笑顔は忘れられません。
また膨大な台数のミニチュアカーコレクションを陳列された時は圧巻でした。




11月には神戸市北区で4世代の家族が一つ屋根の下に暮らす
住まいが完成しました。

今までに僕が経験したことの無い色々な問題を

一つ一つ解決しながら前へ進んでいきました。
「エゴマ」と木の香りがする健康で優しい住まいです。


窓を開け放つと心地よい乾いた風が部屋の中を通り抜けます。
四季の変化を五感で感じられる家です。

仕事は終わったわけではありません。
これから長いお付き合いが始まります。
何せ僕たちは「掛かりつけの医者」のようなもの。
設計した住まいのすべてを熟知しているのですから。。。

そして、今工事中の住宅もまた設計中の建物も、
これから一歩を踏み出す新しいクライアントの皆様も
スタジオクランツォに設計を依頼して本当に良かったと思われるように、
所員一同真摯に建物と向かい合い、情熱を傾け
クライアントとその土地に相応しい唯一の「そこにしか存在しない建物」を
創っていきたいと思います。

皆様、来年も何卒宜しくお願い致します。

スタジオクランツォ1級建築士事務所 
代表 山口是彦 他所員一同

2011年12月26日月曜日

嬉しい贈り物(虫明牡蠣)




昨年秋に竣工した「櫻山居」お施主様から美味しい贈り物をいただきました。

お住まいの近くで採れる「虫明(むしあげ)湾の牡蠣」を事務所で食べて下さいとたくさん!
虫明湾は大きな川がないため、塩が濃く美味しい牡蠣が採れると評判の場所。

嬉しいですね。いつも季節ごとに地元の美味しい食材を送ってくださいます。

最近、住まいの一部にお店を開店されたとのこと。
私もまだ伺ってないので、どんなものを扱われているのか大変興味があるところ。
来春、仕事が一段落したらみんなでお邪魔しようと思ってます。


櫻山居の夕景。
今は下の段の荒地だったところも開墾され畑にされているとのこと。
どんな無農薬の野菜ができるのでしょうか。
お母様と汗を流しながら畑を耕している「Kさん」の顔が浮かびます。

櫻山居 がこの写真の中に建っています。わかりますか?
右下の白い建物の視線を左に動かすと中央より左手に黒い箱が見えますか?
周りはオリーブ畑です。



Kさんいつもありがとうございます。
さて、今夜は焼牡蠣にでもしようかな。

2011年12月24日土曜日

第10回「キッチンに住む」フォトコンテスト審査員賞受賞






今日はクリスマスイヴですね。
みなさんどんな夜を過ごされるのでしょうか?

イタリアやアメリカの友人達から素敵なクリスマスカードも届きましたが、
残念ながら僕は今夜一人で仕事です。。。。。
まあクリスマスに誰かと食事なんて、そんなイベントは今更必要な歳でもありませんが。。
(なんとなく負け惜しみに聞こえるかなあ)

そんな中、トーヨーキッチン&リビング(株)から素敵なプレゼントが届きました。

第10回「キッチンに住む」フォトコンテストで今年4月に竣工した「BW-H」が
昨年の「P-H」に続いて2年連続で「審査員賞」を受賞しました。快挙です!!

来春の「CASA BRUTUS」紙に掲載されると思いますが、
詳しくはまた後日ご報告いたします。




リビング、テラスを中心にした「BW-H」の竣工写真。撮影 SS大阪 清水向山

「BW-H」のお施主様は「P-H」のお施主様から紹介して頂きました。
お友達同士の住まいが同じ賞を受賞するなんて、とても「HAPPY!」だと
思いませんか?

今年も昨年に続いて受賞します!とお施主様に宣言していたので、
ちょっとホッとしましたが。

関係者の皆様、ありがとうございました。
フォトグラファーの「清水向山」さん今年もやりましたね!

暮れなずむ空をバックにした「P-H」。撮影 SS大阪 清水向山

2011年12月22日木曜日

タイワンフウ



今年の春に完成した集合住宅「アーバネックス京橋プライマリーワン」
出来上がってからずっと気になっていたことがありました。

それはシンボルツリーに「タイワンフウ」という落葉樹を選択したのですが、
それが計画通りにちゃんと紅葉(黄葉)してくれたどうかということ。

気になっていたのですが、なかなか確認に行けなくて心配でした。
宣伝用に黄葉した「タイワンフウ」が入ったCGパースを作っていましたので
ウソになっては実のところ具合が悪かったのです。

今日、やっと確認しに行くことが出来ました。
もうかなり散りかけていましたが、結果は。。。写真の通りです。
ちょっとほっとしました。

まだ若木だし高さも5mほどしかありません。根付きもしっかりとしていないと思います。
だから葉も小さいし少なめです。
来年はもう少し大きくなって(最終的には10m程まで成長して欲しいと思ってます)
入居者を楽しませて欲しいと願ってます。

「タイワンフウ」はなんとなくカエデの葉に似ているのでよく間違えられますが、
カエデ科の木ではありません。マンサク科フウ属の木です。
写真のように赤色から徐々に黄変していき薄褐色になり落葉します。
紅葉も黄葉も楽しめるのでこの木をシンボルツリーに選んだのですが、
現地で落ち葉を拾い集めてきました。

紅葉(黄葉)の原理みなさんご存知だと思いますが、詳しく知りたい方は下記へ
www.phyton-cide.org/series8.html

玄関ホールの正面右手ガラス越しにに紅葉したタイワンフウが見えるように
レイアウトしてあるのですが、時期がちょっと遅くて下葉が落ちてしまってて。。

ちょっと残念!

2011年12月18日日曜日

愛しのチーズ




日曜日の夜、あるプロジェクトの最終イメージを固めるため
一人アトリエでパソコンを睨む。

大まかなイメージは出来ているが、細部のディテールを確定させるためには
自分の頭の中に完成パースを描き、それをヘリコプターに搭載したカメラのように
ぐるぐると回りながらチェックをする。
まあいつものことで、そう簡単にハイ出来上がりとはいかない。

30分睨んでは10分休憩。あんまり効率がいいとは言えないが、
自分の中ではこれがベスト!と思っている。

お腹が空くといいアイデアも浮かばない。ちょっと休憩。
今日は事務所に来る前、デパ地下で白かびチーズ(ブリー・ド・リヨン)と
フランスパンを買ってきた。それにシャンパーニュといきたいところだが、
我慢して近くのSTARBUCKSに行きカプチーノを用意。

この白カビチーズとフランスパンを食べる度思い出すことがある。

40年ほど前、高校生の頃ですが、何を思ったか学校のランチに
時々フランスパンと白カビチーズを持参していた。
確かに学校はフランス系のミッションスクールではあったが、
もちろん親が持たせた訳ではない。
その頃の友人と二人でお金を出し合い本当に昼ごはんとして買っていた。

地方の小都市長崎にはその当時輸入食材専門店は1軒しかなく、
高校生が行くような場所ではなかったが、当時その店がカッコよく見えたのだろう。
子供の小遣いで買うには高価な食材だったチーズ。
親には教材を買うんだと言ってお金をせしめてたような気もするが。。。

まあ小生意気な高校生だったんでしょう。デルモンテのピクルスとかも買ってたもんなあ。
クラスメイトからは「なんだコイツら。。。。」と冷ややかな視線を浴びながら。

その時の友人、今はレストランのオーナーになってます。。。

2011年12月15日木曜日

蟹おじや (西天満 松弥)




僕の好きな料理人の一人、西天満「松弥」の中井さんから「この日に来て下さい」と
日時を指定されて食事のお誘いをいただいた。ただし、4名でという条件付きで!

平日の夜ではあったけど、なんとか友人達を誘い集め伺った。
何故4名かというと、この人数であれば他の予約をお断りし、
料理に集中すること出来るのだそうだ。
まったく商売にならないだろうに、いつもそんな調子でお店を開いておられる。

それで「今日はどうしても食べて欲しい蟹があるから、自分なりのやり方で
提供します」と言われた。
何年も技を極めるためにお店を開かず、能勢の山里に篭って切磋琢磨した人の
料理だもの美味しくないわけがない。

蟹みそ、殻、身などでダシを取った濃厚なつけ汁。
ちょっと飲んでみると旨みが凝縮した味、美味しい!
そこに中井さんがご自分でしゃぶらせた蟹の身を受け取り、
箸で削ぎ取りってつけ汁の中へ入れる。
火が通った部位と生の部位を同時に味わって欲しいための彼の流儀。
つけ汁にくぐらせた蟹肉はとろりとして別格の味、本当に美味しいです。

〆は雑炊ではなくおじや。
先ほどのつけ汁に炊き立てのご飯入れおじやにする。
これは忘れられない味でした。
京都の緒方さんもハンパではない人だけど、
やっぱり中井さんは凄い人だなあ。「惚れてしまいそうです!」


中井さんと調理場、ちらっと写しました。ゴメンナサイ!

デザートは完熟するまで放っておいた柿の果肉をそぎ落とし
栗のアイスクリームにかけたもの。これ凄い味です。
その絶妙な組み合わせに4人ともびっくり!みんなもう一皿食べたかった。
アイス作りは納得がいくものが出来るまで5年かかったそうで、
あるメーカーから商品化しないかと言われたそうですが
丁寧にお断りなさったとか。。。



中井さんから「山口さん、どうせおせち料理食べないんだろうから
うちの店で食べてみる?」とお誘いいただいた。食べてみたいよなあ。



そんな料理また家庭画報みたいな雑誌に掲載されるのかなあ?

2011年12月13日火曜日

和のテイスト







現在デザイン進行中の「松ヶ枝プロジェクト」 11階建ての集合住宅ですが、
テーマは「和」を感じる光と影。

日本の伝統的素材や情景をファサードや共有空間にデザインし、
現代的な建築材料と対比させながら、「美しく洗練された住まい」を表現するものです。






一部g00gleより転写
写真はコンセプトをプレゼンする際に使ったイメージ。






「1/f ゆらぎ」なども使って、温かで優しい現代的な和モダンの世界を作ろうとしています。


このコンセプトでクライアントの承認も頂き、具体的な設計プランに入っています。


溶融亜鉛メッキをリン酸処理したスチールが、程よいアクセントになるはずです。



平成25年3月竣工予定です。


2011年12月11日日曜日

「記憶の家」上棟



「記憶の家」も上棟式を迎えました。
「海に背を向ける家」と同時期に竣工予定です。

模型と同じように(当たり前ですが) 姿が浮かび上がってきます。
コールテン鋼の安定錆はもう少し先になりそうですが、
徐々にいい感じに錆びつつあります。


6mスパンのリビングダイニング開口部。
心地よい光と風が身体を包み込むはずです。
田畑の残る周辺環境にどのような佇まいが出現するか楽しみです。

玄関の通り土間。
春になると薪ストーブが置かれた玄昌石の黒い土間の向こうに、
蛇籠とコールテン鋼の開口部から田畑の緑がくっきりと見え
美しいコントラストが豊かな空間を演出してくれるはず。

キッチンの小窓からは家業の名残である醤油醸造のレンガ煙突が
こんな風に見えると思います。

少しずつ時間は過ぎて行きます。
大人であるクライアントとお会いしている時は
歳を取っていくことをあまり意識しませんが、
お子様達を見ていると時間の経過を嫌というほど実感させられます。

そういえば最近髪に白いものが目立つようになってきました。
でももっと知識を吸収したいし、人や建物を眺める旅もしたい。
そしてこれから先、もっともっと素敵な出会いがあるような気がします。


2011年12月9日金曜日

上棟






今日はとても寒かったですね。
数日前の大安の日から、土台を敷き始めた「海に背を向ける家」、
昨日の雨の中から建て方が始まり、明日上棟します。
混構造の複雑な骨組みですが、なんとか明日予定通り上棟式が出来そうです。

中に入ると見た目以上に大きい住まいだという事を実感します。

リビングの吹き抜け部分 、一番高いところで天井まで6.5mあります。
リビング天井高(3.3m)ダイニング天井高(2.9m)と高くしましたので
空間にとてもゆとりがあります。


ダイニングからリビング側を見る。正面上部の開口は
天井部分に設けたハイサイドライトになります。
道路を挟んで集合住宅があるため、大きな開口が取れません。
天井を一部折上げてプライバシーを確保しながら明るい光だけを取り込むのです。

階段途中には高い天井高を利用して収納スペースを作ってあります。

一部屋だけ眺望のよい部屋が2階の南東の角にあります。
この部屋はご主人が少年の頃から叶えたかった夢を実現するスペース。
1階の階高を4mにした理由の一つが、この部屋の眺望を確保することだったのですが、
大阪湾から、金剛山の方まで見渡せます。夜景も美しいのではないでしょうか。



竣工予定は当初1月末でしたが、少し延ばして頂いて3月末に完成します。
明日も「記憶の家」が上棟を迎えます。完成時期も同じ3月ですが
まったく異なるコンセプトの建物で、楽しく仕事をさせて頂いてます。
有難いことだと痛感しています。



新しく設計が始まった「眺めを楽しむ家」は3階に展望風呂を設置するプランで
なんとかまとまりそうです。敷地に隣接する桜並木と大阪湾を一望する素晴らしい
ロケーションですが、あまりにも条件が良過ぎるので設計者としては
変に力まないで、自然体でこの条件に向き合いたいと思います。