2013年10月28日月曜日

岡本にて



昨日の日曜日、朝一番で「削ぎ取られた風景」の現場へ。
住まいを建てる前に擁壁を再構築しなければならず、
工事内容を詳細に説明するため近隣にお住まいの方へご挨拶に。

近隣の方には不安感のないよう細心の注意を払い説明をする。
擁壁工事予定地で1時間ほど説明をさせて頂き了承頂いた。
日時を調整しながら隣接する敷地の方へ1軒1軒ご了解を頂いていく。

一見華やかな仕事をしていると思われがちな私ですが、
地道にコツコツと必要な業務を続ける日もあります。

午後からはRC住宅のリノベーションを計画されている神戸市東灘区岡本の住宅へ。
昨日は空も晴れ渡り気持ちが良くて、阪急岡本駅からゆっくりと歩いて現地に向かう。


















この辺りは細く曲がりくねった道が多く、すんなりと目的地にたどり着かない。
心に余裕がある時はそれが楽しく思えることもある。
道すがら両側に並ぶ家々を眺めながら歩くのは、設計者として愉しみでもある。
この時期、ほとんどのお宅の庭に植えられた「金木犀」から優しい香りが漂う。
空気が甘く、心地よい。
いつもなら見過ごしがちな路地の風景も穏やかで、
秋の草花も可憐で小さな花を満開にして、
道端のあちこちを青や薄紅色に染めている。
何か幸福感で満ち溢れているような気がするのは僕だけだろうか。














1軒の塀がないお住まいに目が止まった。
イングリッシュガーデン風の庭の端に、
ストーブ用の薪が無造作に積まれている。
草花の中をすり抜けるほどの小道が玄関へと続いている。
何かほっとする風景だと思う。

普段、光とは?陰影とは?空間とは?など大上段に構えて
学生達に話をすることが多いし、建築計画も何か力んで考えていることが
多いかもしれないなあと、このお宅の佇まいを眺めて思った。
































柳に風、肩の力を抜いてもっと気楽にやりましょうよ!
自由に背を伸ばす庭の草花達にそんな声を掛けられているような気がした。

2013年10月25日金曜日

建築写真家



スタジオクランツォが設計する建物の竣工写真、
今はある一人の建築写真家にお願いしております。

「4X5」のデライトフィルムやタングステンフィルムで撮影していた時代は
グラフィック系の写真家や若手の才能ある写真家、
企業写真事務所など、何人かにお願いしておりました。

世の中がデジタル時代に移り変わり、
カメラもほとんどが撮影後の処理が簡単に出来るデジタルカメラになり
撮影時の写真家の勘や微妙なテクニック、経験値による写真の出来栄えが
それほど変わらなくなったような気がします。

それでも設計者の意図を汲み取り、
それを表現する力はやはり長く付き合った写真家との
「あうんの呼吸」があればこそ、私のデザインした建物は
私らしくあるのだと思います。

建築写真はある意味、そこに存在している本当の建物とは
どこか違うかもしれません。
それは「まだ色がついていない」からです。
建物は設計・施工者から施主に引き渡された瞬間から
施主の色に少しずつ変化していきます。
それもまた楽しい事だと思います。

できることなら、デザインしたそれぞれの建物、
同じ建築写真家の手で、10年刻みぐらいで定点写真にしてみたいですね。
建物が施主によってどのように変化し、写真家はそれをどのように表現するのか
とてもワクワクします。






























































「抱きしめられる家」 2013年・9月  竣工

撮影  清水向山建築写真事務所

















2013年10月22日火曜日

香茸


季節柄「キノコ」を食する機会に恵まれることが多い。
秋のキノコはどうしても松茸に目が行きがちだが
世の中にはもっと素晴らしいキノコ(個人的に)があることを最近知った。

ある会社のオーナーと伺ったお店で出された「香茸」というキノコ。
見かけはとても地味なキノコなのだが、手に取って鼻孔に近づけてみると
何ともスパイシーな芳香がする。

ジビエでよくある内蔵や血で作るソースにスパイスを加えたような香りと
言ったらいいのだろうか、丁子(クローブ)のような甘く強いオリエンタルな
香りがするキノコで主に北海道辺りで採れる野生のものだそうだ。

天ぷらなどにして食べるとより風味が増す。
より美味しく頂くために乾燥した海老をすりつぶし、粉状にした揚げ粉を使う。

タイプは違うが「トリュフ」のような食欲をそそる香りと旨みがある。
機会があれば是非一度ご賞味あれ!

黒っぽいものが香茸、白っぽいものは天然の舞茸

2013年10月19日土曜日

夢の続き
















いくつかのプロジェクトの打合せや作図の合間に
なかなか手が付けられなかったプロジェクト模型を
コツコツと作っております。

寄棟の屋根(チタン葺き)なので、少しクラッシックな雰囲気に
見えるかもしれませんが、リゾートホテルのようなリラックスした
空間や設えがあちらこちらに配置された集合住宅です。
詳しいことはお話できませんが、ゆったりと時間を過ごす
大人のための住まいを計画しています。
完成後はもっとモダンな建物になる予定です!

ハワイ・マウイ島のワイレアポイントに
素晴らしい別荘群がありますが
そういった雰囲気もあるかもしれませんね。

スケルトンインフィル構造で天井も高く、
梁型が出ないフラットな設計です。

水面を眺め、周辺の美しい林を借景にした建物で、
せせらぎの音が各階の共用廊下に何処からともなく流れ
住戸内に設えられた展望バルコニーからは、
遠くの山々が木立の向こうに霞みます。

このプロジェクトはまだまだ時間がかかりますが、
お施主様と美味しいお茶を飲みながら、
2人で果てしない夢と現実の間を行ったり来たりしながら
ちょっとづつ前進しています。
浮世離れしたプロジェクトかもしれませんが、
完成すればスタジオクランツォの
代表的な作品になると思います。

こちらはワイレアポイントの別荘。
ハリソン・フォードさんの別荘もあるとか。。。

2013年10月16日水曜日

ランチを食べながら。。



祭日の月曜日、敦賀へ昼食を食べながらの打合せに伺いました。

まずは腹ごしらえ、施主のTさんが選んで下さったのは
「ふぐ丼」、色々な部位が入っていて、なかなか美味しかったです。














こちらのお店では詳細な打合せというよりも、建物が完成までの
タイムスケジュール的なお話を少し。。。

それから、場所を変えて珈琲でも飲みませんか?と
ご主人から誘われ伺ったお店が下の写真。
なかなか風情があります。
































民家を改装したなかなか味のある自家焙煎珈琲のお店です。
珈琲とあんみつなどを頂きながら、プランの打合せ。
ここで持参したCG画像を数点見ていただきました。














庭が広いのでかなり大きいシンボルツリーを植えようと考えてます。
ブランコやツリーハウスの計画など、
新しい住まいでどんな生活をしようか話がはずみます。。。
南向きの庭は野芝もよく育つと思います。

外壁から飛び出したステップを上がると、
ルーフデッキには花見台ならぬ、「花火台」があり、
毎年気比の松原で開かれる花火が目の前で打ちあがり、
遮るものがないので最高の場所。

庭でごろんと横になり見る事も可能ですが、
ここはやっぱり、高いところで見るのが気持ちいいでしょうと、
奥様のリクエスト。。。

自分達が望んでいた事をプランにしっかりと網羅して頂いたので
細かい注文がほとんど無いということで
早めに実施設計をスタートさせ、完成時期を2ヶ月ほど繰上げることにしました。

2013年10月13日日曜日

「眺めを楽しむ家」上棟



本日は大安。

芦屋の「眺めを楽しむ家」は晴天の本日、
無事上棟を迎えることが出来ました。
初めてお会いしてからもう2年以上の月日が流れていました。
その間紆余曲折もありましたが、皆さんの思いが詰まった
建物のカタチがやっと見えるところまで到達しました。

六甲山系から吹き降ろす風が心地よいとても穏やかな日です。




























この住まいは周囲の近隣には閉じていますが、
南側は2階リビング・ダイニング・バスルームに
大きな開口部を設けています。
遮るものがほとんど無いため東は大阪キタの高層ビル群から、
南は神戸市摩耶埠頭、そして遠くには関空、淡路島辺りまで
大パノラマが広がります。

その上、3階には建物から飛び出したキャンティレバーの
展望デッキを備えた書斎兼AVルームがあります。
今日初めて3階へ上がられた施主ご夫妻、
あまりの眺望に本当に驚かれた様子。
奥様はご主人がこのフロアに上がったきり、
階下に下りて来ないのではないかと心配されてました。
それこそ本当に「眺めを楽しむ家」そのものです。














写真は2階リビングからの眺め、3階は。。。。。
宝物ですから完成までそっとしておきましょう。
キッチンで調理していてもこの風景が眺められますし
春になれば西側の窓から満開の桜が切り取られた絵のように
見えることでしょう!

上棟式の後、お施主様から一緒に食事をしませんかとお誘い頂きました。
場所は新居からそれほど遠くないフレンチレストラン「芦屋フレンチ・北じま」




























































身体に優しい味付けと食材、とても美味しかったです。
特にオマール海老で出汁を取ったブイヤベース風のスープ
濃厚な味で素晴らしかったです。

色々なお話で盛り上がりましたが、本当に楽しいひと時で
工務店担当者・私どものスタッフ共々誘って頂きとても感謝しております。
「Tさん」ご馳走様でした。
次回定例会議も宜しくお願いします。

明日は敦賀で進めている住宅のお施主様とパワーランチ会議です!?。

2013年10月8日火曜日

「オープンハウス」・・・・・しません!



設計事務所を開設してから20年以上経ちますが
僕は今だに「オープンハウス」なるものを開いた経験がありません。
これから先も開催するつもりもありません。

考え方は色々あるでしょうし、設計事務所も自営業ですから
生活の糧としての仕事は必要です。
そのための「オープンハウス」や見学会を否定するつもりもありません。

ただ、自分としては新築やリノベーションした住まいはやはり唯一「お施主様」のもの。
僕もお施主様と向き合って工務店共々必死に作ってきたという思いがあります。
その思いはそこにこれから住まわれる「主の方」に生活の中で
ご理解頂ければいいかなと考えています。

お披露目はお施主様が本当に見て欲しいと思われる方に見ていただければ
充分かなと思います。

いずれにしろ、建物を見られて同じものを作って欲しいという方は
いらっしゃらないでしょうし、そもそもお施主様が違えばライフスタイルも
色々な好みも、その土地の環境・気候風土も違うわけですから
同じものが出来るわけがありません。

スタジオクランツォの住宅は正直言って、バラバラです。
姿かたち、素材、色等々 同じものはありません。

唯一あるとすれば、お施主様とのヒアリング・バスや電車、自前の足を使った
敷地調査、それらを踏まえた上で考える「コンセプト」です。
このコンセプトから僕が勝手に命名する「住まいの名前」が建物の特徴になります。

そして如何に「洗練されて美しい建物」を作るかということ。
洗練されて美しいとは建物の姿かたちばかりを言うのではありません。
建物を引き渡し、そこで始まった生活そのものが美しく輝く
幸せな家族の日常であって欲しいのです。
そんな思いを込めた住まいをこれからも一生懸命作って行こうと思います。












「碇を下ろしたフロートハウス」














「抱きしめられる家」

















「海に背を向ける家」











「記憶の家」













「BW‐H」

















「櫻山居」そして
エトセトラ・・・・・

2013年10月5日土曜日

時は巡る



1ヶ月ほど前、ある方からメールが届いた。

そのメールには神戸の山手で自分達の好みの住まいを見つけ
その建物を購入したいと考えているので、リノベーションをして頂けないか?とありました。

リノベーションは建築家にお願いしたくて、自分達の嗜好や
無類のイタリア好きということもあり、色々探していたら私にたどり着いたそうで
直ぐにでも会いたいという内容が書いてありました。

お施主様も私も多忙ということでなかなかタイミングが会わず、
やっと今日その購入された建物を拝見させていただいた。

建築家が自邸として建てられたその建物は当然個性的でありました。
ただお施主様のライフスタイルにフィットしないところもあり、
どのようにしてリノベーションするか、工務店も交え話し合いました。














確認申請書等を拝見させて頂くと、設計者の名前に見覚えがありました。
ヒアリングさせていただいてる時から、知り合いではないかと気になっていました。

18年ほど前、東京であるコンペの表彰式があったのですが、
同じ賞を頂いた神戸の建築家の方がおられ、関西同士ということもあり
レセプションパーティで色々な話をさせて頂き、これから仲良くしましょう!と
名刺交換して別れた。

その後数年は年賀状のやり取りもしていたのだが、
会う機会が得られず疎遠になってしまった。
名刺に書いてあった住所の近くに行く度、どうされてるかなあと思うもの
連絡するまでにはならなかった。。。

そして今日、どのようなご縁かはわからないけれどその彼の自邸と巡り合うこととなった。
事情があり、東京へ引越しするためにこの住まいを手放されたそうだが、
残念ながらご本人とはお会いする事は叶わなかった。

互いにリノベーション部門のコンペで賞を頂いたのだが、
その彼の自邸を僕がリノベーションすることになるとは夢にも思わなかったが
これも何かの巡り合わせなのだろうか。。。。

2013年10月3日木曜日

竣工写真















8月下旬から天候不順もあり、
なかなか撮りきれなかった「抱きしめられる家」
先週やっと撮り終わり、カメラマンと写真セレクト、
カバー写真をどのアングルにするかなど打合せを経て、
現在竣工写真集として製作中です。

3度も撮影にお邪魔させて頂き、施主のOさんご夫妻には
大変なご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。

しかし、出来栄えは何度も撮り直しさせて頂いたおかげで
美しい仕上がりとなりました。

すべてのアングルは公表できませんが、あまりにも美しいので
一部のみ皆様にも見て頂きたいと思いました。











































































また、いずれWEBサイト上にアップいたしますが、
光と影、空間の距離、気配を考えた洗練された住まいです。

耐候性鋼板にリン酸処理した目隠しパネルも
美しい光の帯を四季を通して表現してくれると思います。

Oさん本当に有難うございました。
心から感謝いたします。

来月には「碇を下ろしたフロートハウス」の写真がアップしてきます。
それはそれでまた個性的な住まいの写真に仕上がると期待しております。